第578話 1ヶ月ぶりに茉子の家へ
地元の駅まで帰ってきて、外に出て一哉と別れ、俺はその足で茉子の家に向かう。
電車に揺られている時に茉子にメッセージを送ったら、既に家に帰ってるって返信が来たから、このまままっすぐ行くか。
「この家に来るのも
前回はバレンタインのチョコを茉子の家で一緒に作る約束をしていた美奈の付き添いで来たんだけど、まさか香織さんと雛先輩が来ていたのには驚かされた。
今年の初詣ではじめて会ったというのに、仲良くなるのが早すぎて、もはやあの三人も親友と呼べるまで仲良くなっている感がある。
そういや、雛先輩が向こうに行ってしまう前に三人は遊ぶ約束をしていたけど、もう遊んだのかな? 俺たちはまだ春休みに入ってないから、入ったら遊びに行くのかもしれないな。
そんなことを考えながら歩いていると、先ほどの格好をした雛先輩が俺の脳内に現れた。
「っ!」
ヤバいな。これは予想以上に俺の脳にしっかりと記憶されてしまっている。
これ、綾奈が知ったら絶対に『むぅ案件』だから、不意に思い出さないようにしないとな。
そもそも綾奈と一緒にいて他の女性のことを考えるってのがないけど。
「よし、着いたな」
茉子の家に到着し、早速インターホンを押した。
『は~い』
するとすぐに、女性の声が聞こえてきた。この声は
「こ、こんにちは。中筋真人です」
茉子には家に行くことを伝えていたけど、茉里さんが出たってことは、茉子は二階にある自分の部屋にいるのかもしれないな。
『あら真人君。いらっしゃい。茉子を呼ぶからちょっと待っててね』
「お願いします」
インターホン越しの茉里さんとの会話はすぐに終わり、それから三十秒ほどで玄関が勢いよく開かれた。
「真人お兄ちゃん!」
出てきたのは茉子だ。今日も相変わらず可愛らしい服を着ているな。
「こんにちは茉子」
「う、うん。こんにちは。……ごめんねお待たせしちゃって」
「これくらいは待ったうちには入らないよ」
それに茉子もなんだか急いで来て玄関を開けてくれたみたいだし、そんな些細なことで咎めたりはしないよ。
「ありがとう……真人お兄ちゃん」
「これくらい普通だって」
茉子が笑顔になってくれたと思ったら、その茉子の後ろから、茉里さんがにゅっと顔を出した。
「いらっしゃい真人君」
「こんにちは茉里さん。お久しぶりです」
「ええ、一ヶ月ぶりね」
茉子と茉里さんがこうして並ぶと、本当に似ているなぁ。親子なんだけど、姉妹と言っても信じられてしまいそうだ。それくらい茉里さんの見た目が綺麗だ。確かあと数年で四十だった気が……。
「ところで真人君。今日はやっぱり?」
「は、はい。先月のお返しを茉子に渡しにきました」
そう言って、俺は持っていたエコバッグに手を突っ込んだ。
そして茉子は、去年もそうだったんだけど、目を見開き、口が弧を描き、頬を染め……待ち望んでいた物が届いたような、そんな子どものような表情をしていた。
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