【毎日19時更新】中学時代、学校一の美少女に恋した俺。別々の高校に進学した好きな人本人から、ボディーガードとして一緒に下校してほしいとお願いされた
第574話 付き合ってるようにしか見えない拓斗と望緒
第574話 付き合ってるようにしか見えない拓斗と望緒
ケーキをテイクアウトで注文した母さんが帰ってから少し時間が経過した頃、お客さんの人数がちょっと少なくなってきたなと思いながら、俺はある人たちを眺めていた。
そう、拓斗さんと星原さんだ。
おしゃべりをする余裕が出来たのか、二人は厨房で話をしているみたいだ。
と思ったら、二人が厨房から出てきた。拓斗さんが制服のボタンを外しながら歩いているので、多分休憩に行くんだ。
星原さんもついて行ってるってことは、二人して休憩かな?
俺が座っている席から離れた所を歩いている二人だけど、なんだかとてもお似合いに見える。
拓斗さんは照れ……というか、ちょっと固いことろがあるみたいだけど、星原さんと二人で話せる時間を大切にしてるのがわかるくらい笑顔だ。
星原さんも、拓斗さんとおしゃべりしているのを見る限り、まんざらでもないんじゃないかって思うくらいは楽しそうにおしゃべりしている。
拓斗さんから話を聞いて、拓斗さんが星原さんに惚れているのは知ってるんだけど、もしそうじゃなかったとしても、今の二人をはたから見たら───
「付き合ってるようにしか見えないけど……」
付き合いたてで、年下の
「え?」
ガトーショコラを口に運ぼうとしていた綾奈の手が止まった。
綾奈さん、そのガトーショコラで今日四つ目のケーキです。マラソン大会が終わったから少しタガが外れたのかな? 明日からも走るんだから問題ないけど、あんまり食べると夕食食べれなくなるよ。
「拓斗さんと星原さんだよ。こうやって見てると仲良くて付き合ってるように見えるなって」
「本当だね。でも拓斗さんの片想いで付き合ってないんだよね?」
「あ、綾奈も拓斗さんの気持ちは知ってるんだね」
「うん。ちょっと前に教えてくれたよ」
綾奈にも言っていたのか。自分に近しい人に教えるってことは、やっぱり拓斗さん……星原さんのことガチなんだ。
冗談半分で自分の恋愛事情を人に開示しても意味ないもんな。ましてや俺たちに彼女との馴れ初めなんかを聞いて参考になんてしないはずだ。
「でも拓斗さん、いつも望緒さんとお話するよりもちょっとだけ緊張しているような……」
この様子から、どうやら綾奈は拓斗さんが明日のホワイトデーに星原さんに告白するってのは知らないみたいだ。この件はかなりデリケートだから、いくら綾奈が他の人に喋ったりしないってわかっていても、異性で拓斗さんが昔から妹のように可愛がってきた綾奈に知られるのは嫌がるかもしれないから、ここは伏せておいた方が良さそうだ。
「きっとお返しを気に入ってくれるかをめっちゃ気にしてるんだと思うよ。拓斗さん、本気で作ってたから」
「真人は拓斗さんと一緒に、明日の分を作ったんだよね?」
「そうだよ」
「えへへ。明日が楽しみだなぁ」
「初めて作ったものだから、味の心配はあるかもだけど、綾奈の分には愛情をめっちゃ入れといたからね」
もちろん作ったクッキーたちの味見はした。普通に食べられる味だったけど、綾奈やみんな感想を聞くまではやっぱりドキドキするから、誤魔化しのない、純度百パーセントの俺の愛情で味を誤魔化す。矛盾してるかもしれないが、綾奈に心から美味しいって思ってもらうにはそれしかない。
「うん! 早く食べたいなぁ」
「明日まで我慢ね」
綾奈は「は~い」と言って、ガトーショコラを口に入れた。
「話は戻るけど、綾奈は星原さんから拓斗のことについてなにか聞いてない?」
「……うん。望緒さんとあまりそういう話はしないから」
ケーキを噛んでいる時に聞いたから、綾奈の返答にちょっと時間がかかった。もう少しタイミングをずらしてから聞いたらよかったな。
「そっか。これは拓斗さんが告白するまで答えはわからない……か」
「うん……」
拓斗さんの告白……上手くいってくれるといいけど、星原さんの気持ちがわからない以上は俺は告白の成功を祈るしかない。
この話題はそれで終了となり、綾奈がガトーショコラを食べ終えてから、俺たちはドゥー・ボヌールをあとにした。
そして綾奈の家に行き、明日の件を明奈さんに伝えると、二つ返事で了承してくれた。
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