第563話 せとかの恨み言
今日の授業は、午前中授業で、返却がメインだった。
私は返されたテストの答案を見ると、今回もほとんどが九十点以上だったから一安心。
やっぱり真人と一緒に勉強するのって楽しいから集中できるし、イチャイチャしたくなったら休憩して……を繰り返していたのが良かったのかな?
ちぃちゃんと乃愛ちゃんも全教科で赤点回避。
このあとのマラソン大会が憂鬱なのか、いつもよりテンションの低いせとかちゃんはかなりいい点数だったみたい。
順位は既に貼り出されてるみたいだから、マラソン大会前の休み時間に見に行ってみよう。
学年末テストの順位が三位であることを確認し、私たちはその足で更衣室に移動して体操服に着替えた。
「はぁ~……。なんでマラソン大会なんてあるの?」
時間まで教室に戻っておしゃべりをしようとして、せとかちゃんが今日何度目かわからないセリフを言った。
「せとか、あんた今日そればっかりだね」
「せとかは昔から大の運動音痴だからね~」
「乃愛、うるさい。はぁ~……」
せとかちゃんの気持ちはすごくわかる。私だって真人と一緒に走っていなかったら、絶対にせとかちゃんみたいなぼやきを言ってたと思うから。
「西蓮寺さんは私と同じだと思ってたのに……うらぎりもの~」
「えぇ……!?」
まさかの裏切り者発言……。
せとかちゃん……そこまで嫌だったんだ。
「ま、綾奈をこんなにしたのは真人なんだから、恨み言は真人に言いなよ」
「中筋君め~……」
「ま、真人は関係ないんじゃ……」
きっかけはダイエットだったけど、私自身の意思で今でも走ってるわけだから。
「でも綾奈ちゃん。中筋君がいなかったら絶対走るのやめてたよね?」
「ど、どうなんだろう? でも、楽しいとは思わなかったと思うよ」
私だけでダイエットを始めたとして、真人のために痩せなきゃって気持ちだけで続けていたと思わないでもないけど、でも絶対に走ってて『楽しい』って感情は湧かなかったはず。
「ほらやっぱり真人じゃん」
「うんうん」
「中筋君め~!」
「ほ、ほら! もうあまり時間ないみたいだから、グラウンドに行ってアップしようよ」
これ以上ここで話していたら、せとかちゃんの真人への怨嗟が強くなる一方だと思った私は、三人にグラウンドに出ようと申し出た。
みんなはそれに賛成してくれたけど、せとかちゃんだけは腰が重かったみたい。
「へ……、へぶしっ!」
学年末テストの順位が張り出されている廊下で自分の順位を確認していると突然くしゃみが出た。
ちなみに俺の順位は十七位だった。
「大丈夫真人?」
「なんだ真人、また風邪か?」
前回の風邪からまだ半年も経ってないから、体調崩すのはまだしばらく先でいいよ。
「いや……。誰か噂でもしてんのかな?」
「綾奈ちゃんじゃないの?」
だと嬉しいけど、今回はなんとなく綾奈ではないような気がする。
「それなら真人はずっとくしゃみしてないとおかしいぜ?」
それだったらめちゃくちゃ嬉しいけど、俺も四六時中ずっと綾奈のことを考えてるってのはさすがに無理だから、違うと思う。
「いや、なんか違う気がする。ちょっと背中に風邪とは違う震えが……」
「きっと綾奈さんのことが好きな高崎の男子から恨まれてるんだな」
「たとえ恨まれてるとしても、綾奈は絶対に誰にもやらんけどな」
綾奈が本気で俺を拒絶しない限りは、絶対に離すつもりはないからな。
まあそんなことは置いといて、そろそろマラソン大会が始まる時間かな?
綾奈、頑張れ!
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