第554話 心配、そしてイチャイチャ
綾奈の体力を温存させるためにと思って言ったんだけど、綾奈はショック……というか絶望の表情をしてしまった。
俺はさっき思ったことを綾奈に言ったのだけれど、それでも綾奈はしゅんとしたままだ。
「朝、真人に会えない……」
ボソッと呟いた綾奈。
なるほど……それが一番の理由か。もちろんすごく嬉しいし、俺も早朝に綾奈に会えないのは寂しいけど、綾奈がマラソン大会で少しでもいい成績を残そうと頑張るのなら、少しでも体力を温存するべきだ。
「綾奈は、この時間に俺に会えないのはいや?」
こくりと頷く綾奈。
ヤバい。嬉しさが込み上げてくる。
「でも、真人が私の身体を心配して言ってくれてるから……うぅ~」
めちゃくちゃ葛藤しているな。
俺の言ってることは理解できるけど、二ヶ月近くこの生活を送ってきて、早朝に俺に会えるのが楽しみに、そしてルーティン化してるから、心が嫌だと叫んでるみたいだ。
多分明日もいつもの時間に目が覚めるだろうから、走らないとなると時間を持て余してしまうよな。
「じ、じゃあ、ランニングではなくウォーキングにしない?」
「ウォーキング?」
「うん。これなら負担も少ないし、私の家の近くを歩いて、戻ってきたら軽くストレッチをする。これなら運動ができるし会えると思ったんだけど……ダメ、かな?」
ウォーキングか。それなら身体への負担も、体力の消費も少ないから、マラソン大会にも支障をきたすことはあまりないよな。
「わかった。じゃあ明日はそれでいこう」
「ありがとう真人! ……ごめんねわがまま言って」
「わがままじゃないよ。綾奈が少しでも俺に会いたがってくれてるのが伝わったからすごく嬉しい」
実際、俺もこの朝のランニングの時間は楽しみだから、綾奈の体調が悪い時以外は極力無くしたくないって思っていたから、綾奈の提案は渡りに船だ。
「えへへ~」
俺が頭を撫でると、綾奈はふにゃっとした笑みを浮かべた。いつ見てもめちゃくちゃ可愛い。
「じゃあ、俺から一つお願いを言っていいかな?」
「お願い?」
「うん。今日はいつもより早く寝ること。ちょっとでも多く睡眠を取って、万全の体勢でマラソン大会に臨んでほしいから」
十分な睡眠を取ることにより、怪我をする可能性を少しでも減らしてほしい。元気な姿で明日の放課後もまた会って、笑顔で結果を聞きたいから。
「わかったよ。心配してくれてありがとう」
「愛してやまないお嫁さんの心配をするのは当たり前だからね」
「えへへ、私も旦那様が大好きだよ♡」
二人で愛を伝え、短いキスを交わす。ああ……本当に幸せだ。
「そうだ。明日の放課後、ドゥー・ボヌールに行かない?」
「ドゥー・ボヌールへ?」
「そう。マラソン大会を頑張ったご褒美みたいなやつでさ」
雛先輩の卒業パーティーでも行ったけど、それでもいつもより食べたケーキは少なかったから、マラソン大会を頑張った時くらいはいっぱい食べてもいいだろう。
それにテストも終わったから、授業もほぼないので午前中で終わるから、日中に行けるのもありがたい。
「うん! すごく楽しみ。よーっし、マラソン大会頑張るぞー!」
「「おー!」」
二人でマラソン大会への気合いを入れ、俺たちは笑いあった。
俺は走らないけど、綾奈がいい成績を残せるよう精一杯祈ろう。
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