第10章 綾奈のマラソン大会と、ホワイトデーの新たな恋
第552話 拓斗からのお誘い
綾奈の部屋で、色々初めての体験をした同日の夜、俺のスマホに珍しい人から電話がかかってきた。
「拓斗さん?」
珍しいというか、初めてスマホのディスプレイに表示された名前だったからちょっと驚いた。
どうしたんだろうか?
前に綾奈に会心のモンブランが出来たから食べに来てほしいって言ったこともあるから、もしかしたら会心のチョコレートケーキも出来たのかな?
会心のモンブランを綾奈に一口貰ったけど、マジで美味しかったから、そうだったら嬉しいな。
俺はちょっとウキウキ気分で通話ボタンをタップした。
「もしもし」
『もしもし真人君? 夜遅くにすまない』
「いえ、大丈夫です。それで、どうしたんですか?」
声を聞く限りでは拓斗さんのテンションは普通だな。これは会心のチョコレートケーキではないっぽいな。
『ああ、大した用じゃないんだけど、真人君はバレンタインのお返しをどうするのかなって』
そうだった。
ホワイトデーは来週の火曜日……テストも終わったからそろそろ本格的に準備しなければいけないと思っていたんだ。
「えっと、家で何か作ろうかとは思ってます」
まだ母さんにキッチンを使わせてもらうよう話をしてないから、明日の朝にでもしようとは考えていた。……今。
ただ、キッチンはいいとして、うちに調理器具なんてあったかな? 母さんがお菓子を焼いたのなんてずっと見てないし。
かと言って、先月に美奈が買ったのを使わせてもらうのもなぁ……。作る物は違うけど形が一緒になるから美奈にとっては、何が入ってるかのドキドキ感がちょっと欠けてしまう。
明日、買いに行くかと頭の中で考えていたら、拓斗さんからこんな提案をされた。
「もしよかったらなんだけど、真人君も俺の家に作りに来ない?」
「え?」
拓斗さんの家? でも確か拓斗さんって実家で暮らしてるんだよな? 千佳さんもいるんじゃ……。
「拓斗さんって、実家暮らしじゃないですか?」
「いや、俺は実家からあまり離れてないところにアパートを借りてるよ」
「え、マジですか?」
「うん。そういや話してなかったな」
当然ながら初耳だ。
俺って拓斗さんとほとんど言葉を交わしたことなかったもんな。
ここで俺に一つの疑問が浮かんだ。
「じゃあ、綾奈にチョコをもらった時に言った、千佳さんに食べられないようにっていうのは……」
あの一言で、俺は拓斗さんは実家で暮らしていると結論づけたようなものだったから、もしかしたら千佳さんやご両親がたまに拓斗さんの家に来てるのかな?
「ああ、あれね。たまに千佳のやつが、俺がちゃんと生活出来てるのかチェックしに来るんだけど、その時に冷蔵庫を漁る時があるんだよ」
「な、なるほど……」
「『アニキに彼女ができた時に彼女を落胆させないように』って言ってな。余計なお世話だっつーの!」
「あはは……」
なんだかんだでお兄さんの心配をしているのが千佳さんらしい。
「っと、すまない。つい愚痴を言ってしまって……。それでどうだろう? 健太郎君と一哉君も来るんだけど」
「え? あいつらも来るんですか!?」
健太郎はわかる。いずれは義兄弟になるんだから。
拓斗さんが先に一哉にも声をかけていたのには驚いた。というか連絡先知ってたんだな。
「ああ。見習いだけど一応パティシエだから、アドバイスくらいは出来るよ。だからどうだろう?」
本職の人がついていてくれるのはめちゃくちゃ心強い。作業工程を聞けるのはもちろん、上手く作るためのコツなんかも教えて貰えそうだし、一人で作るよりもぐっと成功率は上がる! 断る理由はないな。
「ぜひお願いします!」
「わかった。なら明後日の日曜日の昼、駅に集合にしよう。俺も休みだし材料もその時に買うつもりだから、何を作るかを大まかにでいいから決めておいてくれ」
「わかりました」
健太郎が電車でここまで来るからだな。
それから俺たちは「おやすみなさい」と言って電話を切った。
よし。綾奈のため、そしてチョコを作ってくれたみんなのために、美味しいお返しを作るぞ!
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