第551話 極上の甘いひとときを……

「「…………」」

 俺と綾奈は向かい合ったまま沈黙していた。

 俺は綾奈からオーケーを貰えるとは思ってなかったから、びっくりしすぎて言葉を紡げないでいる。顔も火照りすぎている。

 一方の綾奈は、多分俺以上に顔を真っ赤にして、口を真一文字に閉ざし、プルプルと震えていた。気のせいか目もクルクルと回っているような……。

 もしかしてその場の空気で了承したんじゃないのか? この様子なら十分にありえるぞ。

 もしも嫌なのに、俺のために無理をしているのなら、俺はそれをすることは出来ない。

「あ、綾奈」

「な、なに? ましゃと……」

「一回落ち着こうか。はい、深呼吸して」

「へ? う、うん……」

 俺に促されるまま、綾奈は深呼吸を数回する。そのおかげで少しは顔の火照りがおさまったみたいだ。

 目の奥もクルクルしてないし、これならもう一度聞いても問題なさそうだ。

「綾奈、本当にいいの?」

「……い、いいよ」

「この場の雰囲気に流されて言ったわけじゃなくて?」

「う、うん」

 マジか。どうやら本当にしてもいいみたいだ。俺の心臓の鼓動が一気に早くなる。

 俺の視線は自然と綾奈の胸へと誘われる。

 制服を校則どおりにきっちり着こなしているけど、冬服だけど膨らみは見て取れる。

 綾奈から許可を貰ったことで、いよいよ現実味を帯びてきて、一気に緊張してきた。

 俺がまだ綾奈の胸を見ていると、綾奈は腕で隠してしまった。

「ま、ましゃと……その、あ、あんまり見られると……恥ずかしい……」

「あ、ああ! ごめん……!」

 そこからはお互い沈黙。こう静かだと俺の心臓の音が綾奈に聞こえないか不安になる。余裕ないって思われそうだ。実際余裕なんて微塵もないけど。

 それからしばらく沈黙が続いたあと、綾奈がゆっくりと立ち上がった。

「綾奈?」

 俺は立ち上がった綾奈の顔を見上げたんだけど、綾奈の顔は相変わらず赤かった。

 綾奈はゆっくりと歩いて俺の正面に立つ。

 ここからどうするのかを、俺はドキドキしながら見ていたんだけど、綾奈はそこから一歩前進し、ゆっくりとあぐらをかいている俺の上に座ろうとしていたので、俺は咄嗟に脚を開き綾奈が座るスペースを確保した。

 綾奈の誕生日にも俺の膝の上に乗ったけど、今回は綾奈は膝を曲げてペタンと座っている。

「あ、綾奈!?」

 当然、予想外の行動に出た綾奈を見て、俺はパニックに陥っていた。

 そんな俺を見ながら、綾奈はゆっくりと腕を俺の首の後ろに回す。

「こ、この体勢の方が、真人も楽かなって……」

「っ!」

 お互いの顔の距離が十センチもない状態でそんなことを言われた俺は息を飲んだ。

 それに、綾奈のとろんとした瞳からの視線が熱い。

 息遣いも少し荒いから、相当恥ずかしく、緊張もしてるんだ。

「あ、綾奈。スカートでその座り方は……」

 ひよっているわけではなく、単純に綾奈のその座り方だと、もしかしたらスカートがめくれ上がってしまうんじゃないかと心配してしまった。

 綾奈の勇気を振り絞った行動に水を差すのはちょっと躊躇われたけど、スカートの中が見えてしまってはいけない。

 だけど綾奈はふるふると首を横に振る。

「……いいよ。こ、ここには私たちしかいないもん」

 つまり、俺には見られても大丈夫だと!?

 いや、わからない。俺がスカートの中を勝手に見る性格ではないと信頼しているからかもしれない。どちらにしても見るつもりはないけど。

 ……とにかくこれ以上何か言ってムードをぶち壊してもいけない。俺も、覚悟を決めよう。

 俺は一度深呼吸をする。

「じゃあ、綾奈」

「うん……真人」

 俺たちは一度、長い口付けを交し、しばらく二人だけの甘い時間を堪能した。

 もちろん……アレもしてもらったけど、マジで極上だった。

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