第550話 綾奈から切り出したアレ
え? おっぱい? 綾奈の口から『おっぱい』って聞こえた?
一息で言い切った綾奈の顔は、熟れたリンゴのように真っ赤に染まっている。
……やっぱり聞き間違いではないよな。
はっきりと聞こえた証拠に、俺の心臓もめちゃくちゃドキドキしてるし。
そしてこのタイミングで、俺は先週の杏子姉ぇの余計な一言を思い出してしまう。
『マサはアヤちゃんにしてもらうことだね~』
卒業式の日、杏子姉ぇが雛先輩の胸に顔を埋めている場面を鮮明に思い出してしまい、俺の顔を一気に熱を帯びる。
先週、杏子姉ぇのお母さんの奏恵叔母さんも綾奈にやっていたけど、テスト勉強を再開してから今までは忘れられていたのに……。
というか、そもそもなんで綾奈はいきなりそんなことを言ってきたんだ?
「あ、綾奈? なんでいきなり……」
「その……ましゃとが雛さんの卒業パーティーでドゥー・ボヌールに向かう道中…………わ、私のおっぱいをチラチラと見てたから……」
「な……!?」
え? 嘘!? あれ、綾奈は気付いてたのか!?
あからさまに見ていたつもりはなかったんだけどなぁ……。
もしかしたら、あの道中手を繋いでいる時に俺を見ていたのか!?
そんな綾奈の視線に気づかないほど、俺は綾奈の胸をチラ見していたのか!?
さっきまで失念していたとはいえ、お嫁さんに「おっぱい触りたいの?」って言わせるのもダメだろ。
いや、俺から「おっぱいに顔を埋めてもいい?」って聞くのもアウトな気がする。……あれ? 夫婦だから、いいのかな? なんか頭がこんがらがってきた。
うーん……綾奈の胸を触りたいといえばそうなんだけど、俺が頼もうとしてるのはそれよりも色々とハードルが高いやつだ。これを実際に綾奈に言うのはかなり勇気がいる。
その綾奈はというと、俺を上目遣いで見たと思ったらすぐに目を逸らし、また俺を見ての繰り返しだ。とてつもなく可愛くて、言うまでもなく頬は真っ赤だ。
せっかく綾奈からパスが回ってきたんだ。ダメ元で言ってみるか。
俺は目を瞑り、一度深呼吸をしてから再び綾奈を見た。
「あ、綾奈」
「は、はい!」
俺を見ていた綾奈は、俺に名前を呼ばれるとビクッと肩が跳ねた。
「えっと、触りたいか触りたくないかと言われれば……触りたい」
「う、うん。……~~~~!」
綾奈が耳まで真っ赤にした。俺も顔がめっちゃ熱い。
「で、でも、俺が考えていたのはそれよりもレベルが高いというか……」
「……へ?」
「じ、実は───」
俺は卒業式の日、杏子姉ぇが雛先輩の胸に顔を埋めていたことを伝えた。そしてその光景を見ていた俺に、杏子姉ぇが『マサはアヤちゃんにしてもらうことだね~』と言ったことも。
あ、もちろん雛先輩の『真人君が望むなら───』の件は言っていない。
俺の話を聞いた綾奈は、顔全体を真っ赤に染め、小さくて可愛い口を半開きにしていた。気のせいか、頭から湯気が出ている気が……。
綾奈は俺が普通に胸を触りたいと思っていたから、まさかおっぱいに顔を埋めたいなんて言われるとは微塵も思っていなかったので、ちょっとショートを起こしているみたいだ。
うん。やっぱり無理みたいだな。こういうのはもう少し大人になってからだ。
「綾奈ごめん。この話は忘れ───」
「……よ」
「え?」
いまだにショートしているんじゃないかって表情をしている綾奈から、ボソッと何かが聞こえた。
「え?」
「……い、いいよ」
聞き返したら、まさかのオーケーだった。
……え? マジで?
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