第548話 綾奈に興味津々の奏恵叔母さん

 いきなり美魔女の奏恵さんに抱きつかれ、またもあわあわとしている綾奈。

 ごめん綾奈。これは助けることが出来ない……。

「なぁにこの子! めちゃくちゃ可愛い子じゃないの!」

 一方の奏恵叔母さんは、綾奈を抱きしめてめちゃくちゃテンションが上がっている。

 なるほど……。杏子姉ぇの綺麗な人を見るとテンションが上がる癖と、やたらと親しい人間にハグをする癖は、母親である奏恵さんの影響か。

「ち、ちょっと、奏恵さん……!」

「ねえねえ、真人君のどこが好きなの~? どんなところに惚れたの?」

「ぜ、全部です……あ、あの離し……っ!」

「やだ即答したわ! 本当に真人君が好きなのね。よかったわね真人君」

「そ、そうですね……」

 みんながいる前で、『俺の全てが好き』と言ってのけた綾奈に頬が熱くなる。

 奏恵叔母さんは綾奈が気に入ったのか、綾奈の頭を自分の大きな果実に沈めた。綾奈の後頭部には奏恵さんの両手があるので、これは簡単には抜け出せないだろうな。

 それを見た俺は、あることを思い出し、思いっきり顔を逸らした。

 仕方ないとはいえ、なんでみんないるこの状況でアレを思い出すかな……。

 俺が思い出していたのは、卒業式の日、雛先輩の教室で杏子姉ぇが雛先輩の悪魔的な果実に顔を埋めていた光景だ。

 思い出さないようにしていたのに、杏子姉ぇの『マサはアヤちゃんにやってもらうことだね~』もリフレインしている始末。

 そして俺が顔を逸らした方向には、運悪く杏子姉ぇがいて、俺の赤くなっているであろう顔を見てにやにやしていた。

 この顔……俺が何を考えているのかを見透かしている。

 そんなイタズラめいた表情のまま、杏子姉ぇは俺の耳へと顔を近づけてきた。

「その様子だと、まだアヤちゃんにしてもらえてないみたいだね~」

「て、テスト前に変なこと思い出させないでくれよ……!」

 テストは明後日からで、テストが終わるまではマジで過度なイチャイチャはしないと、昨日あれから改めて綾奈と決めたんだから、今はそんなこと出来るわけないだろ。

「というか、杏子姉ぇは勉強しなくても大丈夫なのかよ?」

 まだ奏恵叔母さんに抱きつかれている綾奈を心の中で心配しながら、俺は姉の心配もしていた。

 明後日からテストが始まるって時期に、こうやってご両親と一緒にうちに来るってことは、赤点は余裕で回避出来るって意味なんだろうけどさ。

「ん? あはは、心配ないよ。これでも東京では勉強してた方だからね」

「そっか」

 それを聞いて安心した。

 杏子姉ぇも自身の『役者 氷見杏子』というネームブランドがあるから、いらない心配というのは理解していたけどね。

「私の心配をするなんて、相変わらずマサは私のこと大好きだなぁ~このこの~」

「そりゃあ、大事な姉ちゃんだし」

 杏子姉ぇはにやにやして、俺の脇腹を肘で小突いてきたので、一月にあった杏子姉ぇの歓迎会の時みたく、からかいを正面から打ち返してやった。

「へ、へ~……そ、そうなんだ。ふ~ん……」

 すると、やはり杏子姉ぇは頬を染めて照れて、自分の髪を指でくるくると弄りだした。

 ……もしかして杏子姉ぇって、こういう返しにめちゃくちゃ弱いのでは?

「ま、ましゃとぉ……助けてぇ」

 いまだに奏恵叔母さんから解放されていない綾奈からSOSが来たので、俺と杏子姉ぇで協力して綾奈を離してもらった。

 ちなみにこの間、健一叔父さんはうちの両親と楽しく話をしていた。

 ここに来た理由を聞いたら、たまたま近くを通ったから、俺たちに挨拶がてら寄ったんだとか。

 そして話の流れで、今度みんなで外食する約束をした。もちろん綾奈も一緒に。

 キャラの濃い杏子姉ぇのご両親と一緒の外食……なかなかカオスな展開になりそうな気もしないでもないが、綾奈も一緒だから楽しみだな。

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