第547話 杏子の両親

 綾奈と杏子姉ぇと三人でリビングに降りると、そこには確かに叔父さんと叔母さん……杏子姉ぇの両親が揃っていた。

 俺の両親と仲良く会話しているみたいで、美奈は叔母さんに抱きつかれていた。

「おー! 真人か!? 大きくなったなあ!」

「こ、こんにちは。お久しぶりです叔父さん……」

 杏子姉ぇのお父さんで、俺の父さんのお兄さんの中筋 健一けんいちさんは、俺を見つけるとすぐに駆け寄り、俺の肩をバシバシと叩いた。痛い。

 俺よりも身長が高く、かなり熱くパワフルな人で、杏子姉ぇの性格は健一さん譲りだ。

奏恵かなえ叔母さんもお久し───」

「真人君? 奏恵お姉さんよ?」

「は、はい! 奏恵お姉さん……」

 俺に笑顔でお姉さん呼びを強要してきたこの女性が、杏子姉ぇのお母さんの中筋奏恵さん。

 正直この人はもうすぐ高校三年生になる娘がいるなんて言っても誰も信じないくらいに綺麗な人だ。とても四十代前半には見えない。

 背も、そして胸部も大きい。両方とも杏子姉ぇよりある。

 二十代前半の麻里姉ぇの隣にいても『少し年上のお姉さん』で通用するくらいの、所謂美魔女だ。

 当然ながら杏子姉ぇの容姿は奏恵さん譲りだ。

「ふふ、お久しぶりね真人君」

「は、はい。お久しぶりです……」

「か、奏恵お姉さん……そろそろ離して」

 美奈はまだ奏恵お姉さんから脱出出来そうにないな……。

 そういや昔からこのお二人は俺たち兄妹に甘かったような気が……。昔の記憶をぼんやりとだけど思い出してきた。

 綾奈はそんなお二人を、そしていまだに肩をバシバシ叩かれている俺をポカンとした様子で見ていた。

「お父さんお母さん、この子だよ! マサのお嫁さん!」

「ふえっ!? あ、あの、杏子さん!?」

 杏子姉ぇにいきなりそんな紹介をされ、慌てる綾奈。杏子姉ぇに背中を押されて一歩前に出た。

 そしてそんな綾奈をまじまじと見つめる叔父さんと叔母さん……もといお姉さん。

 初対面の大人の人にじーっと見つめられ、あわあわ言っている綾奈。可愛い。

 あ、綾奈が俺に視線で助けを求めている。叔父さんの肩バシが止んでいる今のうちに、俺は綾奈の隣へ行き、手を繋いだ。

「あ……」

 俺が手を繋いだことに少し驚いていた綾奈だったが、次の瞬間には落ち着きを取り戻したのか、俺に微笑んでくれた。すっごい可愛い。

「えっと……は、はじめまして! さ、西蓮寺綾奈です。真人の恋人で妻です。よろしくお願いします」

 綾奈は杏子姉ぇの時と同じ自己紹介をし、深々と頭を下げた。

 俺は何度も綾奈を『お嫁さん』って呼んできたけど、他の人に『真人の妻』と言ってるのを聞くと、すごくドキドキする。

 そう名乗ってもらえるのって、すごく幸せだ。

 心の中で幸せを感じていると、奏恵お姉さんに動きがあった。

 今までハグしていた美奈を解放し、小走りで綾奈目掛けてやってきて、そのまま綾奈に抱きついた。

 俺と手を繋いだままで、物理的に避けられない状態だった綾奈は、「え? え!?」と戸惑っていた。

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