第546話 土曜日午後の来客
翌日の土曜日のお昼。
お昼ご飯を食べた俺と綾奈は勉強を再開していた。
昨日のイチャイチャでちゃんと充電が出来ていたのか、起床してすぐのキスしかしていない。
誰だよ所構わずイチャイチャしてるって言ったやつは? 俺たちだってやれば出来るんだぞ!?
午後三時前、そろそろ休憩をしようと思い始めていた俺の耳に、インターホンの音が聞こえた。どうやらお客さんが来たようだ。
「誰か来たのかな?」
「みたいだね」
確かリビングには母さんがいたはずだから、俺が出なくても大丈夫だろう。
「そろそろ休憩しよっか」
「うん」
インターホンが鳴ったのはちょうど良かったかもしれない。こうしてスムーズに休憩に移ることが出来たのだから。
俺は座ったままで背伸びをしていると、綾奈が俺のそばまでやってきた。腕と腕がくっついている。
「あ、綾奈……」
「え、えへへ。そろそろ真人に甘えたいな~って思って……」
「っ!」
綾奈はそう言って、俺の服の袖を少し遠慮気味につまんできた。
そしてそんな綾奈の顔を見ると、上目遣いでじーっと俺を見つめていた。視線が熱い。
お嫁さんの可愛すぎる上目遣いにドキドキしながら、俺はつままれていない方の手を綾奈の頬へとゆっくり移動させた。
「あ……まさと……」
俺が頬に手を当てると、綾奈の頬がさらに赤く染った。
これが俺のキスの合図だと熟知している綾奈は、俺が何も言わずとも目を閉じ顎を少し突き出した。
俺はすぐにキスはせず、綾奈の顔を見ていた。
シミひとつない白い肌、閉じている
「……?」
綾奈が片目を少し開けた。どうやらなかなかキスをしてこないから気になったようだ。
これ以上綾奈を待たせてもいけないし、俺もキスがしたかったので、俺はゆっくりと顔を近づける。
そしてもう少しで唇と唇の距離がゼロになる直前───
ドタドタドタドタ……!
すごい勢いで階段を上る足音が聞こえてきた。
それを不思議に思った俺は綾奈から顔を離した。
「誰だ? 美奈か?」
「……むぅ」
でも美奈がこんなに早く階段を上るかな? 可能性としては美奈が一番高いけど、なんか違う気がする。
そもそもあいつ、部屋にいるんじゃないのか?
キスをし損ねた綾奈は頬を膨らませている。
マジで誰だ? 俺たちのイチャイチャを妨げ……もとい、階段を上ってくるのは?
俺が疑問に思っていると、部屋のドアが勢いよくバンと開かれる音がした。
『や、みっちゃん』
『うえぇ!? 杏子お姉ちゃん!?』
そう、開かれたのは隣の美奈の部屋だ。
どうやら来客……イチャイチャを邪魔したのは杏子姉ぇのようだ。
美奈はノックもせずに突然やって来た杏子姉ぇにマジで驚いているようだ。これを機に美奈も俺の部屋に入ってくる時はノックをする習慣をつけてほしいな。
『え? お兄ちゃんに用があったんじゃないの?』
『みっちゃんにも用はあるよ。マサの部屋にいきなり押しかけたらアヤちゃんとイチャついてるかもしれないから最初はみっちゃんにしたの』
美奈の部屋のドアが開けられているから、隣の部屋の会話が聞こえてくるけど、なんで俺と綾奈がイチャイチャしてる前提で話してるんだ!?
しようとしてたけどさ、でもちょっと前までは真面目に勉強してたんだぞ!
それに杏子姉ぇの言い分だと、ノックをしないで入る気満々だったことが容易に想像出来る。
「あぅ~……」
綾奈も恥ずかしくて照れてる。……可愛い。
『で? 私に用事って?』
『あ、そうそう。実は私のお父さんとお母さんも来ててね。それでみっちゃんとマサに挨拶したいって』
マジ? 叔父さんと叔母さん来てるのか。
杏子姉ぇがこっちに帰ってきてから、まだ挨拶出来てなかったな。
会うのは十年以上ぶりだから、実はぼんやりとしか覚えてなかったりする。
「杏子さんのご両親?」
「来てるみたいだね。綾奈も挨拶する?」
叔父さんと叔母さんは綾奈にとっても親族になる人たちだ。ここで挨拶しておいて親交を深めておいてもいいかもしれない。
「ちょっと緊張するけど……する」
「よし。なら行こうか」
「うん」
その直後、杏子姉ぇがノックもせずに俺の部屋に入ってきて、開口一番「イチャイチャしてない!」と言って驚いていた。
杏子姉ぇが入ってくるとわかってるのにイチャイチャしてられるか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます