第539話 一緒にお風呂の件
俺の家に到着し、一緒にリビングに入ると母さんが夕飯の準備を進めていた。
「綾奈ちゃん! よく来たわね」
俺たちを見つけると、母さんは手を止めて俺たちのそばまでやって来た。
「良子さん。またよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそよろしくね。夕飯までもうちょっとかかるから、二階でくつろいでちょうだい」
「あ、荷物を置いたらお手伝いします!」
「いいのよ綾奈ちゃん。気持ちだけ受け取っておくわ」
「で、ても……」
「綾奈ちゃんは今回、テスト勉強をするために来たのだから、こっちのことは気にしないで、勉強に集中して。ね?」
そうだよな。今回のお泊まりはあくまで勉強合宿みたいな感じだもんな。俺ももし母さんの立場ならそう言うな。
「わかりました……」
綾奈も正論を言われたから何も言えない。
だけどそんなにしょげなくても……。
しょげてる綾奈を見ていると、階段からドタドタと足音が聞こえてきた。どうやら美奈が降りてきたみたいだ。
「お義姉ちゃん!」
美奈は綾奈を呼び、それに気づいた綾奈が美奈の方を向いたのを見ると、そのまま綾奈へ抱きついた。
「おかえりなさいお義姉ちゃん!」
「うん。ただいま美奈ちゃん」
「もう部屋に行く?」
「えっと……」
綾奈はチラッと母さんを見た。行ってもいいかを確認するためだろうか?
綾奈が何を言いたいのかを理解した母さんは、にこっと笑い、一度だけ首肯した。
それを見た綾奈は、美奈を離し、身体ごと母さんに向けて、「では良子さん、失礼します」と言って、美奈と手を繋いだ。
「真人、先に行ってるね」
「うん。俺もあとで行くよ。キャリーケースは置いといてくれたら持っていくよ」
「それは私が持つ」
「気をつけろよ美奈」
二泊三日分の着替えや必要な物、そして勉強道具しか入っていないから、軽いと思うけど、油断していたら階段を踏み外し……みたいなことが起きないとも限らないと思った俺は、自然と美奈に注意を促していた。
「大丈夫だよお兄ちゃん。じゃあ行こ、お義姉ちゃん」
「うん」
美奈も綾奈に甘えたいと思ったので、俺は少しだけ間を開けてから二階に上がろうと思っていたので、リビングから出ていく綾奈と美奈の背中を見送った。
さて、俺はどうしようかな? 自分の部屋でくつろいでもいいけど、部屋に行く途中で美奈の部屋の前を通るから、綾奈に甘える美奈の声を聞いてしまったらちょっと気まずいかもしれないから、ちょっとリビングでテレビでも見てようかな。
「真人、ちょっといいかしら?」
「え?」
テレビを見るために移動しようと思ったら、料理を再開した母さんに呼び止められた。
なんだろ? 俺に聞きたいことでもあるのか? それともこのお泊まりではイチャイチャするなとでも言うのかな?
来週はテストなんだ。イチャイチャはするとは思うけど、勉強が大事だからこの週末はイチャイチャはちょっとだけ控えようとは思ってたけど……。
「あんた今回も綾奈ちゃんとお風呂に入るの?」
「え!?」
そういえば母さんにお風呂の件を聞いてなかった。まさか母さんから聞いてくるとは……。
「その反応を見ると、入る気だったのね」
「えっと……ダメ?」
前回のお泊まりでも許してくれたから、今回も大丈夫だと思ってたけど……。
「今回は許可出来ないわよ」
母さんの返事はノーだった。
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