第527話 三年生の教室で百合展開?

 四人で雛先輩の教室の前までやってきたんだけど、何やら人だかりが出来ている。

 風見高校一の美少女を最後に一目見ようとしているギャラリーかな? でも女子もけっこういるから、一概には言えないかもしれない。

 雛先輩って女子にも人気があるのかな?

「人がいっぱいだな」

「だね。どうする? 諦める?」

 今、無理に会わなくても大丈夫といえば大丈夫なんだけど……やっぱり挨拶しておきたい。

「あ、でも頑張れば教室に入れるよ」

 香織さんが言ったように、人と人との間に隙間があった。これなら頑張れば教室に入ることが出来るな。

 ダイエットしていてよかった。

「よし、なら行くか」

 俺たちは隙間をぬって進み、雛先輩の教室へと足を踏み入れた。

 そして視界が開けると、女子も多かった理由をすぐに知ることとなった。

「ひーちゃん先輩、本当に卒業しちゃうの?」

「ごめんね~杏子ちゃん。でもまた会えるわ~」

 なんと杏子姉ぇと雛先輩が別れを惜しんで抱きしめあっていた。

 あまり身長差のないとんでもない美少女二人の百合がいきなり目の前に広がっていてびっくりする。

 なるほど。女子も多かったのは、ここに杏子姉ぇがいたからなんだ。

 でも雛先輩もみんなから慕われていたし、女子の全てが杏子姉ぇ目当てで来たわけではないかもな。

 あ、雛先輩が杏子姉ぇの頭を撫でている。……なんだろう。母性をすごく感じる。

「ひーちゃん先輩~……」

 杏子姉ぇがすごく悲しそうな声を出した。

 ……まではよかったんだけど、杏子姉ぇが怪しい動きをはじめた。

 少しずつ頭を下に動かし、やがて杏子姉ぇは雛先輩のそのたわわに実った果実に顔を埋めた。

 それを見た周りの皆さんがざわざわとしだした。

「ふふ、かわいいわ杏子ちゃん~」

「いや何やっとんじゃ姉ーー!!」

 雛先輩が驚きもせずに杏子姉ぇの頭を撫で続けて止める気ゼロだったので、俺が大声でツッコミを入れた。

「あれ、マサ? いたの?」

「いたよ! 俺だけじゃなくて一哉たちも来てるよ。というか今はそんなこといいからそこから顔を離せよ杏子姉ぇ!」

 あとこっちを見ろよ! 声がくぐもったままだし、女子はキャーキャー言ってるし男子は羨望の眼差しがすごいんだからな!?

「ふっふっふ~、羨ましかろうマサ~。マサはこんなことできないからね~」

「な、何言ってんだよ杏子姉ぇ……!」

 雛先輩の果実に顔を埋めるって、男子は全員出来ないだろう!

「ひーちゃん先輩のおっぱい、最高だよー」

「……っ!」

 というか人気女優がフツーにセクハラすんなよ。

 近くに茜もいるけど、相変わらず止める気はないみたいだし、雛先輩も……ん?

 あれ? 雛先輩、なんか頬を真っ赤に染めて俺をじっと見ている。

 どうしたんだろう? いつもおっとりしている先輩が、珍しい。

「雛先輩、どうしたんです?」

「ま、真人君……」

「は、はい」

「ま、真人君が望むなら、杏子ちゃんみたいにおっぱい《ここ》に顔を埋めても───」

「しません!」

 何言ってんのこの先輩!? そんなこと出来るわけないじゃん!

 もしやってしまったら間違いなく綾奈を泣かせてしまうし、千佳さんにボコボコにされる。

 いや、最悪千佳さんの他に翔太さんとゲーセン店長の磯浦さんまで加わりそうだ。うん。死しか見えない。

 それ以前に、弟がいる前で言うセリフじゃないですよ雛先輩!

「マサはアヤちゃんにしてもらうことだね~」

「なっ、ん……!」

 綾奈の胸に顔を埋めている自分を想像して、一気に顔が熱くなった。

 そ、そんなエロいこと……綾奈にしかお願い出来ないけど…………お、お願いしていいのか?

「あはは、真人顔真っ赤~」

「茜うるさい! というか───」

 このままだと収拾がつかないと思った俺は、いまだに雛先輩の果実に顔を埋めている杏子姉ぇの背後へとずんずん歩を進め、杏子姉ぇの両肩を掴んだ。

「いい加減離れろよ杏子姉ぇ!」

 そして肩を引っ張り、杏子姉ぇを無理やりひっぺがした。あまり力は入れてないのに割と簡単に剥がせた。

「あぁ、いいところだったのに……」

「あまり雛先輩を困らせるなよ」

「私は楽しかったわよ~」

「ちょっとは困ってください雛先輩!」

 なんか一気に疲れたけど、それからしばらくは普通に話をしてその場は解散となった。

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