【毎日19時更新】中学時代、学校一の美少女に恋した俺。別々の高校に進学した好きな人本人から、ボディーガードとして一緒に下校してほしいとお願いされた
第521話 店内でイチャつく夫婦と、ヤキモチを妬く綾奈
第521話 店内でイチャつく夫婦と、ヤキモチを妬く綾奈
「お兄ちゃん、めっちゃ緊張してたね」
店員さんが見えなくなり、一息ついていると美奈が言ってきた。
「仕方ないだろ。こういうの、慣れてないんだから」
こいつは俺の性格を知り尽くしているから、わかってて言っているのはバレバレだ。
「お疲れ様。真人お兄ちゃん」
「ありがとう茉子」
やっぱり茉子は優しいなぁ。
「ありがとう真人。でも任せっきりにしちゃってごめんね」
綾奈が労いながら俺の頭を撫でてくれた。
「緊張したけど、バルーンブーケを提案したのは俺なんだから、俺がやらないとだろ」
「というか店内でイチャついてる!?」
「道中でやるかと思ってたけど、まさかお店の中でイチャつくとは……」
「はわわ……」
「「すみません」」
綾奈に撫でてもらうのがあまりにも心地よすぎて、つい……。
今夜、またやってもらおうかな?
「お待たせしました」
そんなやり取りをしていると、店員さんが戻ってきた。戻ってくる前に綾奈は手を離していたので、この人の前ではイチャついてはいない。セーフだ。
「見本としてはこのような感じなのですが、いかがですか?」
店員さんはそう言いながら、持っていたバルーンブーケを優しく俺たちの前に置いた。
そのバルーンブーケは、花の形をした風船が三つほどあり、その他に丸やハート型の風船も様々な大きさの物があった。透明な風船も一つある。
「すごい……かわいい」
綾奈も気に入ったようで、感想が自然と声に出た感じだ。
「うん。俺もいいと思う。みんなは?」
俺は美奈たちの意見と聞こうとして、三人の顔を見た。
すると、三人とも頷いてくれたので、どうやらみんなこれでオッケーのようだ。
「これでお願いします」
「ありがとうございます。それで、この透明な風船に文字を入れるようになるのですが……」
「ああ……」
店員さんはそこで言葉を止めた。
俺たちが指定した言葉は、『雛先輩 ご卒業おめでとうございます』だ。
だけど、この透明な風船はめちゃくちゃ大きいわけではない。
風船の大きさ的にそれだけの文字を入れるのは難しいかもしれないな。可能ではあるとは思うけど、フォントのサイズが小さくなってしまいかねない。
文字は、ちょっとフランクにするか。
「なら、『雛先輩 卒業おめでとう』でお願いします」
六文字削れば文字を小さくしすぎる必要もないだろう。
先輩に贈る言葉にしては、ちょっと礼儀を欠いたものになってしまうが、雛先輩なら気にすることはないだろうから大丈夫だ。
「かしこまりました。それでお値段なのですが……」
「はい」
俺はごくりと唾を飲みこんだ。
いよいよ肝心な値段の発表だ。
バルーンブーケの相場はわからないが、風船の数もけっこう多いし、文字入れもお願いするから、もしかしたら一万円を超えるかもしれない。
多少オーバーしても全然大丈夫だけど……果たしていくらになる?
「こちらのお値段、九千九百円になりますがよろしいですか?」
おお……ギリギリ一万円を切っている!
「みんな、いい?」
俺はみんなに確認すると、「うん」とか、「もちろん」と言ってくれた。
「はい。これでお願いします」
「承知致しました」
店員さんはにこっと微笑んだ。このお姉さん、笑うとマジで可愛いな。
「……むぅ、真人、今何を考えてるの?」
「っ! い、いや、バルーンブーケのことしか考えてないけど!?」
綾奈が頬を膨らませ、ジト目で俺を睨んでくる。
……俺のお嫁さん、鋭すぎない?
「お兄ちゃん、わかりやすすぎ」
「本当にね」
「あはは……」
え? そんなにわかりやすかった?
「ふふ、お渡しはいかがいたしましょうか?」
あれ? 店員さんにも笑われた? というか今のやり取りを見て微笑ましいような、そんな笑みだ。
「え、えっと、今月の二十八日の夕方に取りに来ようと思ってるのですが……」
「わかりました。ではその時間までにご用意させていただきますね」
「お、お願いします。それであの、代金は……」
じつはお金はまだみんなから徴収していない。立て替えれるだけのお金は持ってきているけど、前払いなのかな?
「お渡しの際で大丈夫ですよ」
よかった。商品と引き換えみたいだ。
「わかりました」
週明けにみんなから徴収するか。
「では、お願いします」
「はい。ありがとうございましたー」
店員さんとの話し合いが終わり、笑顔でお見送りされながら、俺たちは店をあとにした。
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