第518話 寝る前のイチャイチャ

 グループチャットも終わり、もう遅い時間なのでそろそろ寝ようと思い、俺と綾奈は揃って一階に降り、トイレを使用してからまた階段を上り、綾奈と麻里姉ぇのそれぞれの部屋の前で、俺と綾奈は向かいあっていた。

「じゃあ、綾奈」

「うん」

「明日はランニングする?」

「真人がするならしようかなって思ってるよ」

 綾奈がダイエットをはじめてからほとんど毎日続けているランニング。テスト期間やお泊まりでも関係なくやるみたいだ。すごいな俺のお嫁さん。

「なら明日も走ろっか」

 俺だって負けていられない。元々走るつもりでいたからもちろんやる。

「うん!」

「じゃあ明日も五時起きで」

「わかった」

 今からだと六時間は眠ることが出来るな。

 ランニングして、午前中はテスト勉強、昼からバルーンブーケのお店に行き、夜にはまたテスト勉強。……なかなかハードな一日になりそうだ。

「じゃあ綾奈。おやすみ」

「うん」

「?」

 綾奈が「おやすみ」と返してくれなかったことに違和感を覚えながら、俺は綾奈に背を向けて麻里姉ぇの部屋へと入った。

 すると、俺はドアノブを持っていないのに扉が閉まった。

『あれ?』っと思いながら後ろを振り向くと、そこには綾奈がいた。

 頬を赤く染めてにこっと微笑んでいる。

「……綾奈さんや。なんでこっちの部屋に来ているのですか?」

 どうしてこっちの部屋に来たのか、その理由は……まあお察しなのだが、とりあえず聞いてみることにした。

「……えっと、真人と一緒に寝たくて」

 やっぱり。

「やっぱり」

 あまりに予想通りすぎて、思っていることが口からも出てしまった。

 でもいいのか? 前回お泊まりに来たときは、朝目覚めたら綾奈が俺のベッドに潜り込んでいて、夢の中で杏子姉ぇとイチャイチャしていたけど、最初から一緒に寝るのは、綾奈のご両親的にはオッケーなのだろうか?

『最後の一線は超えるな』とは言われているけど、それ以外はとくに制限が設けられているわけではないからやっぱりいいのかな?

「弘樹さんと明奈さんはなんて言ってた?」

 俺としても、綾奈と一緒に眠りたいけど、やはり保護者の言うことは聞かないと、次回以降のお泊まりに制限がかけられそうだしな。

「ま、真人がトイレに行っている間に、リビングにいたお母さんに聞いたら……『えっちなことをしなければいいわよ』って……」

「そ、そうなんだ……」

『えっちなこと』って、どの程度のことを言ってるんだ?

 わからんけど、とりあえず気をつけた方がいいな。

「じゃあ、一緒に寝よっか」

「うん!」

 俺と一緒に眠れることがそんなに嬉しいのか、綾奈は満面の笑みを見せてくれた。

 それを見た俺は当然のようにドキドキしてしまい、寝付けるかどうか不安になっていた。

 ま、大丈夫でしょ。

「今回はどうやって寝る?」

「えっと……今回は、真人に後ろから抱きしめられるようにして寝てみたい」

「わ、わかった」

 その体勢で一緒に寝たことはなかったな。大体が正面から抱きしめているか、腕枕して仰向けで寝るかだったからな。

「じゃあ、綾奈が先にベッドに入って」

「うん」

 綾奈は頷いて、指輪を外して、俺が自分の指輪とペンダントを置くために敷いていたハンカチの上に置いて、先に麻里姉ぇのベッドに入った。

「?」

 入ったのだが、綾奈はなぜか俺の方を向いて横になっていた。後ろから抱きしめるのなら、綾奈は俺に背中を向けて寝ないとだけど……。

「そっちの向きでいいの?」

「……寝る前に、真人とちゅう、したいなって」

「っ!」

 な、なるほど。寝る前にイチャイチャしたいってことか。

 もちろん俺もしたいと思ってたけど、マジで熟睡できるかな?

 ……ま、なんとかなるだろ。

 俺も指輪を外し、綾奈の指輪のすぐそばに置いてからベッドに入り、綾奈を正面から抱きしめた。

「ましゃと~♡」

 すると、綾奈はすぐに甘えモードになって、俺の胸に額を擦り付けてきた。

 可愛い仕草にさらにドキドキしながら、俺は綾奈を優しく抱きしめる。

「真人、すごくドキドキしてる」

「そりゃあ、そんなに可愛く甘えられたら誰だってドキドキするよ」

 これでドキドキしない猛者なんかいないって。

「えへへ~、嬉しい」

「……ねえ、綾奈」

「なあに?」

「……は、早く、キス……したいんですが」

「……うん♡」

 綾奈は額の擦り付けをやめ、頭を枕に乗せてすぐ、俺は綾奈の唇を奪った。

「んっ!? ……んふふ~」

 最初はびっくりしていた綾奈だけど、すぐに嬉しそうな声を出した。

 その声で俺の脳は痺れ、しばらく夢中でキスをし続けた……。

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