第511話 また一緒にお風呂に入りたい

 そんなこんなで綾奈の家に到着。

「真人君、おかえりなさい」

「ただいまです明奈さん。今日からまたお世話になります」

「はーい。ふふ、楽しみだわ」

 そう言って鼻歌を歌いながらリビングに入っていく明奈さん。マジで楽しみにしてくれてるんだな。

「あ、真人! おかえりなさい。待ってたよ!」

 いつもならすぐにお出迎えしてくれる綾奈がいないと思っていたら、トイレから出てきた。

 その綾奈は俺を見つけるとすぐにこちらに来て抱きついた。

 一時間くらい前まで下校で一緒にいたのに、この喜びよう。俺も嬉しくなる。

「ただいま綾奈」

「もう部屋行く?」

「そうだね。明奈さんに挨拶もしたし、行くよ」

 弘樹さんはまだ仕事から帰ってないみたいだし、挨拶は戻られてからだな。

「じゃあ一緒に行こっ」

「うん」

 俺は綾奈と二階へ行って、前回同様麻里姉ぇの部屋にお邪魔して荷物を置く。

 今回も部屋を使わせてもらうことは麻里姉ぇに既にメッセージで伝えてある。『毎回使っていい』と言われているけど、やっぱり事前に伝えるのはマナーとして必要だと思ったからだ。

 ……女の人の部屋を使わせてもらうわけだしな。

 俺が麻里姉ぇのベッドに腰を下ろすと、そのすぐ隣に綾奈も座る。

 そして綾奈が甘えてきたので、俺は弘樹さんが帰ってくるまで綾奈を膝枕しつつ、頭を撫でる。

「そういえば綾奈」

「なあに真人?」

「いつの間に美奈とお風呂に入る約束したんだ?」

 ここに来る前の美奈との会話を思い出したので聞いてみた。

 聞いたところでどうもしないけど、気にはなっていたからな。

「冬休みの最終日にね。ほら、ゲームしたあとに真人が部屋から出ていっちゃった時があったでしょ? あの時に美奈ちゃんと約束したんだよ」

「ああ、なるほど」

 あの時か。美奈が綾奈に甘えるもんだと思ってたけど、ちゃっかりそんな約束もしていたのか。

 でも、そっか。

 あの冬休み中に美奈は綾奈と一回もお風呂に入ってなかったのか。めちゃくちゃ仲のいい義姉妹だから、てっきり俺の知らないところで一緒に入ってるのかもって思っていたけど、マジで入ってないんだな。

 それなのに、腰の痛みもあったけど俺は綾奈と三回も入ったんだよな。

 水着を着ていたとはいえ、めっちゃドキドキした。そして今も思い出してドキドキしている。

「美奈ちゃんもあの約束、覚えててくれたんだ~」

「あいつも綾奈が大好きだからな。一緒にお風呂という一大イベントを忘れるわけないって」

 美奈の中では、来週の綾奈のお泊まりで一緒に入るのは決定しているみたいだからな。この一週間は毎日ソワソワするんじゃないかな?

「ふふ、嬉しいなぁ。私も今から楽しみになってきちゃった」

「それ聞いたら美奈も喜ぶよ」

 是非とも直前かメッセージでもいいから伝えてやってほしい。

 それから少しして、横を向いていた綾奈は仰向けになり、じっと俺の顔を見てくる。

 なんか頬が赤いけど……もっとイチャイチャしたいのかな?

「あのね、真人……」

「どうしたの綾奈?」

 急に歯切れが悪くなったな。

「真人とも一緒にお風呂……入りたい」

「っ!」

 予想外の不意打ちに、俺の顔は一気に熱を帯び、心臓も痛いくらい高鳴った。

「真人とまた、洗いっこしたい……ダメ?」

 そんな熱を帯びた目で見られたらダメと言えなくなってしまう。最初から言うつもりなんてないけど。

「ダメじゃないよ。父さんと母さんに言ってからになると思うけど、また一緒に入ろうね」

 俺たちが一緒に入りたいって言っても、保護者である父さんと母さんに却下されてしまえば、それも叶わなくなる。

 特に反対はされないと思うけど、やっぱり事前に言わないのはダメだよな。

「うん♡」

 こうして、来週のお泊まりで四回目の一緒にお風呂が暫定的にだけど決定した。

 それからは弘樹さんが帰ってくるまでに綾奈がさらに甘えてきたので、俺も負けじと綾奈を甘え倒した。

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