第510話 お泊まりの準備
その次の日からも、俺は放課後に綾奈の家で共にテスト勉強に勤しみ、今日は二月二十四日の金曜日。今はその放課後だ。
この日も綾奈の家で勉強するのだが、今俺は自分の家にいる。
理由は今日から日曜日まで、また綾奈の家にお泊まりをするための道具を取りに戻るためだ。
今回はキャリーケースの中に、着替えや諸々必要な物の他に、勉強道具一式も入れている。
あくまで目的はプチ勉強合宿であって、遊んだりイチャイチャするためだけではない。
まぁ、仮に忘れてもまた取りに帰れば済む話なんだけどね。
ちなみに今回、美奈にも綾奈の家にお泊まりするか聞いていた。
以前、綾奈のご両親の弘樹さんと明奈さんに、美奈さえ良ければ一緒に連れてきて大丈夫と言われていたからだ。
美奈も綾奈の家でお泊まりしてみたそうだったし、いい機会と思って昨日までに声をかけたんだけど、「勉強するためにお泊まりをするから、二人の邪魔をしたくない」と言って断られた。
まあ、遊びが目的じゃないし、高校生二人の勉強の邪魔をしたくないのも本音だろうな。気にしなくていいのに。
それに来週は綾奈がうちに泊まりに来るから、その時の寝る前にいっぱい綾奈に甘えたり話をするって言ってたしな。
「よし!」
持って行く物の最終チェックを済ませ、キャリーケースを閉じ、それを持ってリビングに入る。
「じゃあ母さん、行ってくるよ」
「いってらっしゃい。あまりあちらに迷惑をかけたらダメよ」
「わかってるよ」
俺は靴に履き替え、玄関を開けると、美奈がそこにいた。ちょうど帰ってきたタイミングだったみたいだ。
「おかえり美奈」
「ただいまお兄ちゃん。もう行くの?」
「ああ。……お前、本当に行かなくていいのか?」
綾奈も綾奈のご両親も、美奈が来るのなら絶対に歓迎してくれる。それに綾奈も寝る前に美奈と話が出来るから嬉しいと思うし……。
美奈も考えが変わってるかもしれないと思い、もう一度だけ聞いた。
「うん。来週はお義姉ちゃんがこっちに来てくれるから、来週お義姉ちゃんといっぱい一緒にいるから」
そう言って美奈はにやりと笑った。まるで『お兄ちゃんには渡さない』と言っているみたいだ。
「まあ、美奈がそう言うならいいけどさ」
「来週、お義姉ちゃんと一緒にお風呂に入るの楽しみだなぁ」
ん? 美奈のやつ、いつの間に綾奈とお風呂に入る約束したんだ?
まあいいや。義姉妹が相変わらず仲良くていいことだ。
……なんか美奈の言葉に含みがあったようにも感じたけど、気にしないようにしよう。
「あまり綾奈にセクハラまがいなことをするなよ」
「失礼な! お兄ちゃんじゃないんだから」
冗談で言ったのになかなか強めに反論されてしまった。いや、多分これ冗談交じりだな。
「俺もそんなことしない……というか綾奈とは夫婦なんだからいいだろ」
俺は綾奈とイチャイチャしている時しかそういった感じで触っていない……はず。なんの脈絡もなしに触ったら綾奈もびっくりするもんな。
美奈も本気で言っているわけではないとわかっているけど、一応名誉のために言っておく。
「わかってるよ。それじゃあお兄ちゃん、楽しんできてね」
「ああ、いってくるよ」
俺は笑顔で送り出してくれる美奈の頭を少し撫で、家の門を出た。
一度美奈に視線を戻すと、美奈は笑顔で手を振っていたので、俺も手を振り返してから綾奈の家に向かうのだった。
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