第505話 3人で綾奈と千佳を迎えに行こう

 そして放課後。テスト期間中なので部活がなく、生徒はみんな下校することになるのだが、なんか「寄り道して帰ろーぜ!」とか、「今日ほしい漫画の発売日だから買って帰ろう」って言ってる人がいて、なんか『自分は遊びに行きます』的な人がちらほらいる。

 テストは再来週からだから、まだ全然余裕があるけど、俺は中学までそれをズルズルと続けてテストは散々だった過去があるから油断はしない。自分のためにも、綾奈のためにもだ。

 まあ、今から綾奈の家で勉強するのを楽しみと感じているから、めちゃくちゃ順位を落とすなんてことはないだろう。

「俺は茜を送っていくから、また明日な」

「私は図書室で勉強するよ。家だとどうもやる気が起きないから……」

 うちのクラスに、茜と杏子姉ぇがやって来ると、一哉は茜と一緒に帰り、香織さんはそのまま図書室に向かっていった。香織さんは環境が変わるとやる気が出るタイプなのかな?

「杏子姉ぇはどうするんだ?」

「そりゃ勉強するよ。転校したてで赤点なんて嫌だもん」

「そもそも赤点取ったら留年だしな……」

 それだと『女優 氷見杏子』の沽券に関わるからな。でもやる気みたいだし大丈夫だろ。

「なら途中まで一緒に帰る?」

「なにマサ~。アヤちゃんとじゃなくて私と一緒に帰りたいの~?」

 なんでにやにやしてんだよ……。

「たまにはいいかなって思ってさ。それに綾奈と合流するから、杏子姉ぇが一緒なら綾奈も喜ぶし」

「アヤちゃんと一緒に帰るんだ! なら私も一緒に行こっ」

 杏子姉ぇ……本当に綾奈が大好きだよな。

 婚約者といとこのお姉さんが仲良くしてくれて俺も嬉しい。

「健太郎は帰るよな?」

「ううん。僕も真人たちと一緒に行くよ」

「え?」

 家から遠くなるのに、どうして俺たちと一緒に帰ろうとしてるんだ?

「わかった! ケンくんちかっちと一緒に勉強するんだ!」

「当たりです」

 ああ、なるほど!

「前回の期末も千佳と一緒に図書館で勉強してたから、今回も一緒にするんです」

「確か前回のテスト期間中、そんなこと聞いたような……」

 綾奈にほとんど会えてなかった寂しさのなか、いつぞやの昼休みに健太郎がそんなことを言っていたのを覚えていた。

「うん。多分テストが近くなったら毎回一緒に勉強すると思う」

「こりゃあ千佳さんは心強いだろうな」

 なにせ風見高校学年一位の健太郎が一緒なんだ。いくら高崎高校のレベルが高くても健太郎なら大体は解いてしまうだろうしな。

「千佳も順位上げたいって言ってるから、少しでも力になりたいんだ」

「百人力だな」

「ねえマサ、ケンくん。そろそろ行こうよ。アヤちゃんとちかっち待ってるかもよ?」

 杏子姉ぇの言葉にスマホで時刻を確認すると、確かにけっこうな時間が経過していた。ちょっと急がないとマジで二人を待たせてしまう。

「ごめん杏子姉ぇ。それじゃあ行こうか」

「うん」

「ほ~い」

 俺たちは三人で足早に学校を出て駅へと向かった。

 下校時に健太郎と一緒に電車に乗るのって何気に初めてだからちょっと変な感じだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る