第500話 学年末テスト勉強の予定

 もうすぐ帰ろうとかという時間、俺は綾奈に膝枕をしてもらっていた。俺の髪を梳くように撫でる綾奈の手がすごく心地いい。

 そんな俺は、もうすぐ自分の家に帰らないといけないのに舟を漕ぎ始めていた。

「真人。あのね……」

「……んぇ?」

 綾奈に呼ばれ、なんとも間抜けな声が出てしまった。

「もしかして、寝そうになってた?」

「うん……。満腹状態で心地よすぎる膝枕をしてもらってたから……」

「えへへ、嬉しいなぁ♡」

 いつもとは別角度から見る綾奈のふにゃっとした笑顔が可愛くて、ドキッとして少しだけ目が覚めた。

「そ、それでどうしたの綾奈?」

 照れたのを紛らわすため、話を続ける俺。

「あ、うん。あのね、来週からうちの学校はテスト期間に入るんだけど……」

「うちも同じだ」

 もうすぐ学年末テストがあるんだよな。『前回のテストよりいい順位』を目標にしてるんだけど、二学期末のテストの順位が八位と過去最高だったが、それ以上いじょううえは正直とれる気がしない。

「同じなんだ! それでね、テスト勉強なんだけど……」

「うん」

「……今回は一緒に勉強しない?」

 テスト勉強……前回の二学期末テストは、綾奈が学年一位を目指したいということで、本気で勉強に取り組むことになり、俺たちは朝の登校の時間だけしか会わないようになった。

 俺も綾奈が『学年十位以内に入ったらなんでも言うことを聞く』というご褒美のために今まで以上に勉強に取り組んでいた。

 だが日が経つにつれ、お互いに会いたいという気持ちがどんどん強くなっていって、勉強効率を落としてしまったことがあった。

 俺なんか綾奈に会いたすぎて自分でも気付かないうちにこの家の前まで来てしまったくらいだ。

 多分、綾奈も前回のそういう失敗を踏まえて言ってきたんだろうな。

「もちろんいいよ」

 そんな俺の返事は決まっていた。綾奈と勉強できるなんてめっちゃ楽しみだ。

「えへへ。ありがとう真人」

「俺も綾奈と勉強出来るのが嬉しいからね。ところでどこで勉強する?」

 一緒に勉強するとなれば、あとは場所だよな。

 う~ん……どちらかの家ってのもアリだとは思うけど、勉強そっちのけでイチャイチャしてしまうかもしれないから、やっぱりここは二学期の中間で健太郎と千佳さんと四人で勉強会を行ったあの図書館かな?

「真人さえよかったら、ここでしたいな~って……」

「マジか」

 綾奈が自分の部屋を指定してきたってことは……綾奈も勉強後はイチャイチャしたいって思ってくれてるのかな?

「真人のお部屋も考えたんだけど、真人は絶対に私をここまで送ろうとするから……それだと二度手間になっちゃうから……って、どうしたの真人?」

「い、いや……なんでもない」

 聞くか? 聞いちゃうか!?

 綾奈との付き合いも長くなってきたから、どんなリアクションをするのか大体わかるけど……うん。見たいから聞いちゃうか。

「その……綾奈も勉強したあとは俺とイチャイチャしたいと思ってくれてるのかなってね」

「ふえ……!?」

 綾奈はそんな可愛い声を上げると、顔が一気に赤くなった。うん、予想通り。

 そして少し間を空け、そのまま俺を見てこくんと頷いた。う、うん……これも予想通りだ。だけど可愛すぎてこっちの頬まで熱くなった。

「……というか真人、私がどんなリアクションをするかわかってて言ったでしょ?」

 おっと、見抜かれてしまった。

 俺が綾奈のことをある程度理解しているのだから、逆もまた然りだ。

 普通ならバツが悪そうにするところだけど、お嫁さんに俺のことをわかってくれているのが伝わって嬉しい。

「……バレた?」

「むぅ……バカ」

 可愛い罵倒いただきました。心が幸せになるが俺はMではない。

「それでね、週末はどっちかの家でお泊まりで勉強出来たらなって……」

「え? マジ!?」

 お泊まりでプチ勉強合宿みたいなのも考えているのはさすがに読めなかった。

「うん。まだお父さんたちに言ってないんだけど、どうかなって……」

「いいね! 許可が出たらやろうよ!」

「うん! 約束ね」

「ああ」

 こんな楽しみなことをやらないなんて思わないだろ! うわぁ……今から来週が楽しみになってきた!

 俺たちは指きりをしてから、ちょっと名残惜しみながら綾奈の膝枕から上半身を起こした俺。

 話もまとまったし、そろそろマジで帰らないとな。

 それから軽くキスをして一緒にリビングに降り、弘樹さんと明奈さんにさっきのお泊まり勉強合宿を言ったら秒で了承をもらえた。

 あとはうちの両親だけだ。

 俺は綾奈のご両親に改めて今日の夕食のお誘い、そしてお泊まりの許可のお礼を言い、外で綾奈ともう一度キスをしてから自分の家に帰宅した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る