第480話 千佳が空き地に来れた理由
三人組が空き地から出ていったあと、俺たち四人はまだ彼らが出ていった入口を見ていた。
「あ」
そんな中、健太郎が何かを思い出したような声を上げた。
「どうした健太郎?」
「す、すっかり忘れてたけど、どうして千佳はこの場所と、僕たちのやり取りを知っていたの?」
「言われてみればそうだな。宮原さん、どうしてなんだ?」
まぁ、冷静になれば当然の質問だよな。俺がここに来るまでにスマホを操作した時間はほとんど一瞬だし、健太郎と一哉からしてみれば、どうしてそんな短時間に千佳さんが場所と話の内容を理解出来ていたのかは謎だろうな。
「実は真人から、【今からビデオ通話する】ってメッセが来て、それから本当にビデオ通話が来てね。わけがわからないまま電話をとったら、画面に映っているのは知らない三人組だったからさらに混乱したよね」
「場所は俺が最初わざとらしくこの空き地のことを言ったから、多分千佳さんならそれだけで伝わると思ったんだよ。それに内容は知らなくても、健太郎をディスっているやつがいて、それを千佳さんが見過ごすはずがないと思ったから。スマホをずっと胸ポケットに入れてたのは、千佳さんに今の状況をビデオ通話で、ライブで見てもらうためだよ」
まぁ、賭けみたいなものだったけど、ちゃんと千佳さんに伝わったみたいでよかったよ。
「そ、そうだったんだ……」
「てかお前、よくそんなこと思いついたな」
「咄嗟だったんだよ」
「あたしがちょうど部活の休憩中だったからよかったけど、そうじゃなかったら今もずっと真人からの着信があったままだったろうね」
「それは……うん」
多分、話に夢中になって千佳さんにビデオ通話を繋げようとしていたのも忘れていただろうな。
あれ? ちょっと待てよ? 千佳さんは部活だったってことは……。
「千佳、部活は松木先生に理由を話して抜けてきたんだよね?」
俺が思っていることを健太郎が先に口にした。
さすがにここまでめっちゃ急いで来たとしても、麻里姉ぇに何かしらの理由を話して抜けさせてもらったに違いないと思うけど、もしかしたらってことも考えられるから……。
「……」
千佳さんは何も喋らないどころか、この真冬にめっちゃ汗をかきはじめた。これ、言ってないやつだ。
「えっと……綾奈には?」
麻里姉ぇに言ってなくとも、親友の綾奈には何かしら言ってそうだけど……はたしてどうなんだろう?
「……」
千佳さんはやっぱり何も言わず、おそるおそるスマホを見た。
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