第479話 決着
というか、今見せてるのって、前に綾奈に送った当時の俺の写真!?
「ちょっ、千佳さん!?」
「勝手に見せてごめん真人。でも、こいつらの考えを正すなら、昔のあんたの写真を見せるのが一番だと思ったから」
「……わ、わかったよ」
俺たちが話しているあいだ、連中は千佳さんのスマホに表示されているであろう当時の俺を見て、「めっちゃデブやん」、「今と全然違う」、「こんなヤツが学校一の美少女に好かれたのか!?」、「めっちゃオタクじゃん」など、思ったことをそのまま言葉にしている。
「真人の左手の薬指にある指輪。あれはあたしの親友が真人の誕生日に贈ったものだよ」
千佳さんがそういうと、三人は目線を千佳さんの写真から俺の指輪へと移した。めっちゃ目を見開いて見ている。
「人はね、心なんだよ。いくら外見が良くても心がクソなヤツなんかとは誰だって付き合いたくないし好きにもならないっしょ? もしもあんたたちがフラれて、健太郎に嫌がらせするんじゃなく、変わらずにその人たちにアタックをし続けていれば、今とは違う未来があったんじゃないの?」
ラノベやアニメでも、想い続けて、告白し続けていたら両想いになって結ばれたってストーリーはたくさんある。現実にそんなことがあるのかはわからないが、もしも三人が一度フラれても、それでもひたむきに好きな人を想い続けていれば、健太郎とは今でも友達でいられたかもだし、今日、俺たちだって友達になれていたかもしれない。
「そんなん結果論だろ……」
「そうかもね。でももしそうなら、今とは違う、お互い笑顔になれた未来だってあったはずだよ」
「「「……」」」
三人は俯いたまま動かない。
きっと頭ではわかってるんだ。千佳さんの言っていることが正しいって。だけど心がそれを受け入れられないでいる。
三人組が葛藤していると、健太郎が一歩前に出た。
「僕は自分の殻に閉じこもってたけど、それでも高校に入って、真人が……親友がその殻を破ってくれて、そして心から特別だと思える人と出会えた。僕は今でも弱いままで、一人だと何も出来ない。みんなに支えられてやっと立っていられるんだ。こんなことを言ったら、また怒るかもしれないけど……僕より強い君たちなら、絶対に心から信頼出来る女性に出会える。僕はそう確信してる」
千佳さんが健太郎の横に並び、健太郎の手を取った。
「誠心誠意想いを告げれば、きっとその人はあんたたちに応えてくれる。フラれても諦めるんじゃなく、想いが残っている限り伝え続ける。もうダメだと諦めて自分の気持ちに蓋をするんじゃなく、その気持ちを憎しみに変えて誰かにあたるんじゃなく、想いを全部出し切るまで諦めないことだよ」
その人が完全に脈ナシの意志を示してしまえばそれまでかもしれないけど、そうじゃなければ可能性があるってことだ。
たとえ一パーセントでも可能性が残っているのなら、がむしゃらに頑張ってみたら想いは通じるかもしれない。諦めてしまえば、本当にそこで終わってしまうから……。
「な、なぁ」
右にいたやつが真ん中のリーダーみたいなやつの袖を引っ張った。
「なんだよ?」
「お、俺、噂で聞いたんだけど、お前が好きな先輩……最近カレシと別れるのは秒読みだって」
「……!」
リーダーらしきやつが目を見開いた。
その反応から察するに、まだその先輩に対して想いは捨てきれてないみたいだ。なら、もしかしたら───
「……行くぞ」
「お、おう」
三人組は歩きだし、空き地を出ようとした。
だけど、健太郎とすれ違う瞬間───
「……悪かった」
確かに一言、そう聞こえた。
そして他の二人もそれぞれ一言健太郎に謝罪をし、彼らは空き地を出ていった。
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