第478話 千佳 VS 3人組
「な、なんだよあんた? てかその制服……高崎高校の生徒だよな?」
「なんで高崎高校の生徒がこんなとこにいるんだよ?」
「というか、さっき清水を名前で呼んでたけど……まさか!?」
「あたしは宮原千佳。高崎高校の一年で、お察しの通り、この清水健太郎の彼女だよ」
さっきの俺に優しく語りかけてきたトーンから一変、今の自己紹介をした千佳さんのトーンはかなり低い。まるでゲーセンで中村と再会した時のように。
「や、やっぱり清水のカノジョかよ!」
「なんでギャルがオタクと付き合ってんだよ!?」
「しかもモデル並みに美人なギャルとか……」
「オタクとかギャルとか関係なくない? そんなことよりさぁ……あたしは会いたかったんだよ。あんたたちに」
「「「!?」」」
千佳さんがこいつらに会いたかった? もしかして、千佳さんは健太郎の過去を知ってるのか?
「あんたらのくだらない逆恨みで健太郎にしてくれたこと、きっちり謝ってもらおうと思ってたからさ」
やっぱりだ。千佳さんは知ってるんだ。
だけど、健太郎はいつ千佳さんに話したんだ?
「お、俺たちは……」
「さっきこの二人に言われたことで、ようやく事の重大さを理解してきてると思うけどさぁ、それだけのことをしといて、なんであんたたちはまだ頭を下げてないわけ?」
「「「……」」」
千佳さんに正論で殴られ、何も言えなくなってるのか? それとも、無意味なプライドでも持っているのか? ずっと下を向いたままだ。
「……あんたも」
「は?」
「あんたもこいつに好意を持った女子たちと同じだろ! こいつの顔を見て、それでこいつに惚れて付き合いだしたんだろ!? 結局男を顔でしか見てないギャルが、俺たちに説教たれてんじゃねーよ!」
「……」
失恋したショックをこじらせてしまったのか、それともその人のことを本当に想っていたからなのか、はたまた両方か。
ただ、どちらにしてもそれで健太郎にあたって嫌がらせをするのは間違っているし許させる行為ではないが……。
「千佳は人を顔で判断するような人じゃないよ!」
千佳さんの隣で黙っていた健太郎が叫んだ。自分の彼女のことを何も知らないのに勝手なことを言われて、さすがに黙ってられなくなったようだ。
「僕は千佳に一目惚れをして、知り合ってから程なくして告白したけど、返事は保留だったよ」
高崎高校の文化祭の後夜祭で言ってたな。確か、千佳さんも満更ではなかったけど、俺と綾奈の行く末を見届けるまで返事は出来ない……だったっけ? それで俺たちが付き合いだしたのを見て、健太郎の告白をオッケーしたんだよな。
「確かに健太郎はかっこいいよ。それは誰が見ても同じことを言うだろうさ。あたしは一度、健太郎が髪を切る前にこの素顔を見たことがあったけど、確かにかっこいいとは思ったけど別にその時から惚れてたりはしなかったよ」
「え?」
確か千佳さんも中学の時、中村に言い寄られていた人の一人なんだよな。もしも千佳さんが男を顔で判断する人だったら、中村と付き合って、結果捨てられていた可能性だってある。
「なら、あんたはいつ清水を好きになったんだよ!?」
「友達になってから付き合うまでに、健太郎に誘われて何回か遊びに行った時だよ。相変わらず目は前髪で隠れてたし、服もお世辞にもオシャレって感じはなかった。だけど、健太郎は二人でいる時はいつもあたしを気にかけてくれて、優しく紳士的な言葉と行動をとってくれた。それまであたしに近づいてくるヤツらは大概あたしの身体目当てのヤツらばかりだったんだけど、健太郎はそんなこと全然なくて、ちゃんとあたしの中身を見てくれていた。そこに少しずつ惹かれていったんだよ」
そうだったのか……。千佳さんが健太郎に惚れた理由を初めて知ったけど、俺も健太郎の気持ちは知らなかったとはいえ、こいつは千佳さんをそんないやらしい目で見たことはなかった。
「それに、あたしたちの後ろにいる、さっき泣き散らかしたこの中筋真人だけど……」
いや確かに泣いたけどさ、そんな表現が出るほど泣いてないはずなんだけど……。
「真人はあたしの親友と付き合い、そして婚約もしてる。中学で学校一の美少女と呼ばれていたあたしの親友とね」
千佳さんはそこで一度言葉を区切ると、コートのポケットからスマホを取り出して操作をし始めた。
「そ、そいつも顔はまあまあかっこいいからじゃないのかよ?」
いやいや、俺はイケメンじゃないからな?
「真人とあたしの親友は、一昨年にほぼ同じタイミングでお互いを好きになったけど、その当時の真人はこんな感じだったよ」
「「「「えっ!?」」」」
相手の三人組と俺の驚きの声が見事に重なった。
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