第476話 怒る真人
風見高校の文化祭で、健太郎のお姉さんの雛先輩が言っていた。
『高校に入っても友達を作ろうとしなかった健ちゃんのお友達になってくれて、健ちゃんが自分の殻を破るきっかけを与えてくれて……』と。
そして六人でゲーセンに行った時、健太郎は中村にこう言っていた。
『僕も真人と友達にならなければ千佳さんと出会えてなかったし、今も友達も出来なくて一人教室の隅にいたと思うし、本当に真人と出会えた事が僕の人生の転機になったんだよ』と。
正直な話、二人のその言葉を聞いたとき、『なんでそんなに大袈裟に言うんだろう?』って思った。だけどこいつらの話で全て合点がいった。
最初、俺がなんのラノベを読んでいるのか気になって健太郎に声をかけたけど、健太郎は返事もしてくれなかった。諦めずに何度か話しかけて、ようやく心を少し開き、今では俺のかけがえのない親友の一人になった健太郎。
その親友をあんな風に変えたやつが……こいつらかよ。
「……ふざけんなよ」
「は?」
「ふざけんなって言ったんだよ!!」
「「「っ!?」」」
「まさと……」
「……」
俺が怒鳴ると、相手の三人組は怯み、健太郎は俺の名を呼び、一哉は三人組をじっと睨んでいた。
どうやら一哉も俺と同じでかなり頭にきてるみたいだ。
「お前らのくだらない逆恨みで、俺の親友はあんなに塞ぎ込んでしまったんだ! あのままだったら、健太郎は高校三年間、なんの楽しい思い出もなく、そして俺たちも健太郎のいい所を全く知らないまま過ごすところだった! お前ら雛先輩がどれだけ健太郎を心配していたかわかってんのか!? お前らにとったらただの遊び半分のつもりだったんだろうが、健太郎には人生を左右するほどの大きなことだったんだぞ! お前らこいつの人生をめちゃくちゃにするところだったんだ! ……そうなったら責任、取れんのかよ?」
「雛先輩のあの様子だと、自分の弟を変えた張本人がお前らだってことは先輩自身知らないんだろうな。健太郎も雛先輩には言ってないっぽいし。もし健太郎が言っていたら、そして健太郎が昔のままだったら、お前らはこいつの家族に一生恨まれてもおかしくはなかった。お前らは……いや、お前らこそ、健太郎の優しさに救われていたんだよ」
「う、あ……」
「そ、そんな……」
「まさか……」
雛先輩は健太郎をめちゃくちゃ溺愛している。そんな愛してやまない弟があんな風に変わってしまったら心配するなというのが無理な話だ。
健太郎のご両親には会ったことがないが、きっとご両親も健太郎をめちゃくちゃ心配しただろうな。
そんな健太郎の家族が、健太郎を変えてしまった犯人を知ってしまったら、一哉が言ったように一生恨まれていたかもしれない。
雛先輩の本気で怒るところは想像出来ないけど。
この時、俺の胸ポケットにあったスマホからピロンと低い音が鳴った。どうやら本当に来たみたいだ。
「健太郎!」
突如、空き地の入口付近から聞き慣れた女性の叫び声が聞こえてきて、俺たち六人は一斉にそちらを向いた。
「ち、千佳! どうして……!?」
息を切らしながら立っていたその人は、色素の薄いオレンジ色の髪がよく似合う、健太郎の最愛の彼女、宮原千佳さんその人だった。
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