第475話 対峙する6人

 俺たちはしばらく歩き、誰もいない空き地に入り、俺、一哉、健太郎はいきなり因縁をつけてきた三人と対峙するように向かいあっている。

「で? 、お前らは健太郎の何を知ってるっていうんだよ? とても義務教育の九年間を健太郎と過ごしてきた口ぶりには思えないが」

 健太郎とこいつら三人の誰かが転校してきたとかでなければ、この地域の学校は小、中とエスカレーター式なはずだから、九年間は同じ学び舎で過ごすこととなる。たとえそれほど親しくなくても、九年もいればそいつの人となりは……健太郎がめちゃくちゃ優しくていいやつというのは最低でも理解出来るはずだ。

 それなのに、健太郎と一緒にいたら酷い目にあうってなんだよ?

「俺はな、中学の頃、こいつのせいで計画が狂わされたんだよ。……いや、俺だけじゃなく、こいつらもな」

「そうだそうだ!」

「お前さえいなければ、俺たちは意中の人と付き合えてたかもしれないんだ!」

 両サイドの二人は真ん中のやつの取り巻きみたいなもんか? ずいぶんとセリフがモブキャラっぽいけど。そんなことはどうでもいい。それよりもだ。

「どういう意味だ?」

 健太郎がいたから、こいつらは中学時代、好きな人と付き合えなかった? え? どういうこと?

「意味わかんねぇんだけど」

 一哉も同じなようで、頭にはてなマークが見える。

「そいつはな、俺たちの好きだった人を横からかすめ取りやがったんだよ!」

「嘘だな」

「ああ」

 何言ってんだこいつら? 健太郎がそんなことするように見えていたのか?

 健太郎は千佳さんが初恋で、それまで誰とも付き合ってこなかはずなのに……。

「俺たちが好きになった人はな、口を揃えて言ったんだよ。……『清水君が好きなの』ってな」

「……え?」

「は?」

 あれ? なんかめちゃくちゃ重い理由があるのかと思っていたけど、それってつまり……。

「お前さえいなければ、俺たちは今頃好きな人とバラ色な高校生活を送れていたはずなんだ!」

「そーだそーだ!」

「全部お前が悪いんだ!」

「「…………」」

 こいつらが好きになった人は、みんな健太郎が好きだったってオチか?

 気持ちはわからんでもない。俺だって、もし綾奈に告白したときにそんな風に断られてたら……これ以上はやめておこう。メンタルブレイク待ったなしだ。

 それに健太郎は外見はもちろん、内面もめちゃくちゃイケメンだ。

 中学までに健太郎に告白した人はきっとめちゃくちゃいたんだろうな。でも健太郎は千佳さんと出会うまで誰とも付き合わなかった。誰とも付き合おうとは思ってなかったのか、はたまた勉強やオタ活で忙しかったからなのか……。

「それで健太郎。お前はその人たちの誰かから告白されたのか?」

「……うん。真ん中の彼の好きだった人に告白された」

「そしてあの人はお前に振られ、今は別の人と付き合っている……!」

「え? なんで知ってんだよ? 同じ高校なのか?」

 一哉が質問を投げた。半ば呆れながら。

「ああ! 必死こいて頑張って、あの人と同じ高校に入学して、今度こそ振り向いてもらおうと思ったら、目の前にあったのは目を背けたくなる光景だったよ……」

 真ん中のやつが空を見上げる。風が吹いてそいつの髪が揺れるが何も感じない。

「えっと、つまりそれは逆恨みってことでいいのか?」

「逆恨みなんて陳腐な言葉で片付けられちまうのは困るな。俺たちはそいつに分からせてやったんだよ」

 健太郎が顔をしかめた。どうやらここからがあまり触れてほしくない内容のようだ。

「……何をわからせてやったんだよ?」

 一哉も声のトーンを落とした。眉も吊り上げている。

「お前は外見も中身もいいが所詮はオタクだ。オタクはオタクらしく身の程を知ってぶを弁えろってな。そしたらこいつは少しずつ学校では目立つような行動はしなくなり、目を前髪で隠し、そして不登校になった。……せいせいしたぜ」

「なっ……!」

「てめぇ……」

 そうか。健太郎が入学当初、誰とも話さずラノベばかり読んでいたのも、こんなかっこいい顔を隠すために前髪を伸ばしていたのも……こいつらが原因だったんだ!

 それを知った瞬間、自分の頭に血が上るのを感じていた。

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