第472話 出会いのきっかけ
二月十三日の月曜日の放課後。
いよいよバレンタインデーを翌日に控え、内心ちょっとそわそわしながら帰り支度をしていると、健太郎が俺の席にやって来た。
「ねえ真人。今日はラノベの発売日だけど一緒に見に行かない?」
そういやそうだ。ネットでどんなラノベが出るのかはざっくりだけど調べているし、ちょうど欲しかった作品も発売されてるんだった。
健太郎と一緒に書店に行くのは久しぶりだからな。綾奈も千佳さんも部活だから断る理由がない。
「いいな。行こう。一哉はどうする?」
茜も部活のはずだから、こいつもすぐ下校するだろうしな。
「そうだな。俺も付き合うよ」
「よし決まり。じゃあ行こう。明星書店でいいよな?」
「おう」
「ありがとう二人とも」
この三人だけでどこかに出かけるのも久しぶりだから、ちょっとテンションが上がる。
明星書店は健太郎の家からわりと近くにあるから、駅から遠くなる俺たちに礼を言ったんだろうな。本当、健太郎は優しいな。
「いいってことよ。さっさと行こうぜ」
こうして俺たちは三人揃って教室を出た。
「そういやここなんだよな? 健太郎が宮原さんに一目惚れしたのって」
校門を出たところで一哉が言った。
二学期の始業式の帰り、ここに千佳さんがいて、俺を待っていたんだよな。今はけっこう慣れたけど、千佳さんのあの露出度の高さは驚いた。太ももと谷間がめっちゃ見えてたもんな。
あれがあったからこそ俺は綾奈と付き合えたわけだし、あの時のことを思い出すと、千佳さんには感謝しかないな。
俺は綾奈を思い、左手の指輪を見る。
「そうだよ。千佳をはじめて見た瞬間、アニメやラノベであるみたいに、全身が雷に打たれたような感覚に襲われたよ」
健太郎の声に、俺は健太郎を見ると、目を細めて千佳さんとはじめて出会った場所を見ている。イケメンだからそれがとても画になる。実際に、そんな健太郎を見た女子生徒の何人かは足を止めて頬を赤らめて健太郎を見ている。
「真人と友達になってなかったら、こんな今はなかったから……ありがとう真人」
「いやいや、大袈裟だって。俺は何もしてないし、それにあの日この場所に千佳さんがいたのは俺に綾奈のボディーガードをお願いするためだったんだし」
お礼を言うなら俺にじゃなくて、出会ってくれた千佳さんに言うべきだろう。
「それでも真人は千佳と知り合いだったんだから、元を辿れば真人に行き着くと思ったからね。だからありがとうだよ」
「お、おう……」
こいつは、なんでこんなナチュラルに言ってくるんだ? これがイケメンの力か?
「照れんな気持ち悪い」
「なにおぅ!?」
横にいた一哉から辛辣な一言をもらい、一哉を睨む。がるる……。
「一哉はそう言ってるけど、真人と親友じゃなかったら東雲先輩とは出会ってなかったんだから、一哉も真人に感謝してるよ」
「いやお前、それをここで言うか……」
ほう……一哉が俺に感謝を。あーでも、確かに六人でゲーセンに行った時に、そんなことを中村に言っていたな。
「普段からもっと感謝の意を示してもらってもいいんだぞ?」
「マウントを取ろうとすんな! ……ほら、さっさと行くぞ」
一哉はそう言うと、早足で明星書店へ向けて歩き出した。
だが俺は見逃さなかった。そんな一哉の頬が少しだけ赤くなっていたのを……。
俺と健太郎は顔を見合わせ、どちらともなく笑い、一哉の後を追い、明星書店へと向かった。
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