第468話 茉子の両親と、美奈以外のお客さん

「みぃちゃんいらっしゃい……って、真人お兄ちゃん!?」

 茉子が俺を見て驚いている。……まぁ、俺が来るって言ってないもんな。

「うん。おまたせマコちゃん」

「こんにちは茉子。あ、心配しなくても俺はもう帰るから」

 美奈の荷物持ちというミッションはこれで完了……あと残っているミッションは一つだ。

 茉子の後ろの玄関がまた開いた。出てくるのは茉里さんかな?

「あら~真人君。こんにちは~」

「というか、なんで真人君がいるの?」

「え? 雛先輩!? 香織さんも!?」

 俺の予想に反し、玄関から出てきたのは雛先輩と香織さんだった。

「香織さんのセリフ、そのままお返しするよ。なんで茉子の家に?」

「そりゃもちろん、今日は四人でチョコを作ろうって約束してたからね」

「マジか!」

 香織さんと茉子と雛先輩……誕生日プレゼントをもらった時から思ったけど、マジで仲いいな。ちゃんと話したのは今年に入ってからだっていうのに。

 俺が驚いていると、玄関が三度みたび開いた。

 中から出てきたのは今度こそ茉子のお母さんの茉里さん。そしてお父さんの智弘ともひろさんだ。

「美奈ちゃんいらっしゃい。真人君も久しぶりね」

「こんにちは美奈ちゃん、真人君。……しかし、真人君は見違えたな」

「こんにちは茉里さん、智弘さん」

「おふたりとも、ご無沙汰してます」

 このおふたりと会うのはいつ以来だろう。智弘さんと最後に会ったのは、俺がまだ太っていた頃だったと思う。

 おふたりは相変わらず優しい笑顔が似合う美男美女夫婦だし、それに身長差も相変わらずだ。

 茉里さんは茉子を大人にしたような、とても綺麗な外見をしていて、身長も百五十センチしかなかったはずだ。そんな低身長の茉里さんだけど……いや、だからというべきか、その大きな果実がめちゃくちゃ目立つ。多分千佳さんとほぼ同じくらいはあるんじゃないか?

 そして智弘さんは本当に優しい人で、茉子を溺愛している。溺愛しているけど、ダメなものはダメと茉子が小さい頃から教えてきたらしいので、茉子はとてもいい子に育った。

 そんな智弘さんの身長は百八十センチと、俺より五センチ高い。

 この夫婦の身長差は三十センチ……俺と綾奈の身長差より十センチも差がある。

 そうだ。今日はおふたりに言わなければいけないことがあるんだった。

「えっと、智弘さん、茉里さん。先日は美奈を泊めていただいて、ありがとうございました」

 俺がおふたりに言いたかったこと……それは先月の美奈のお泊まりのお礼だ。

 父さんと母さんが隣県に日帰り旅行に行ったけど雪で帰れなくなって、そしてその日は俺の誕生日で、綾奈と二人きりにするよう気を使った美奈が急きょこの家に泊まることになったんだけど、後日母さんに聞くと、おふたりは美奈の急な申し出にもかかわらず快諾してくれたって言っていた。

 だから美奈のお泊まりのきっかけを作った身としてはお礼を言わなければと思っていたのだ。

「いいんだよ真人君。気にしなくて」

「そうよ。茉子はとっても楽しそうにしてたし、私たちも美奈ちゃんといっぱいお話できて楽しかったわ」

 そう言うだろうとは思っていた。本当に優しい人たちだ。

「はい……。ありがとうございます」

「さてみんな。ここにいては寒いしそろそろ中に入ろう。真人君も上がっていくかい?」

「いえ、今日は美奈の荷物持ちと、お礼を言うために来ましたから、俺はもう帰ります」

 目的はこれで果たした。それなのに俺が家に上がると、チョコ作りをする女性陣の邪魔になりかねないしな。

「そうか。残念だな」

「真人君。私たちもまたお話したいからいつでもいらっしゃい」

「そうですね、いつか必ず。じゃあ美奈、俺は帰るから。茉子も香織さんも雛先輩もまた」

「うん。またね真人お兄ちゃん」

「真人君。また明日ね」

「気をつけて帰ってね~」

「……ありがとう。お兄ちゃん」

 俺はみんなにぺこりと会釈し、ゆっくりとその場をあとにした。

 帰ったらあの対戦アクションゲームでもやるか。打倒茉子を目指して……。

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