第467話 兄妹で茉子の家へ

 二月十二日の日曜日。この日俺は、美奈と一緒に茉子の家に向かっていた。

 なんでもチョコ作りを一緒にしようと前々から約束していたらしい。

 なぜ俺まで茉子の家に向かっているのかというと、単純な話、荷物持ちだ。

 昨日美奈に『荷物持ちとしてついてきてよ』と言われていたし、それに茉子のご両親にお礼を言いたかったからな。

 正直、荷物は重くないので美奈が自分で持てばいいのに……とは思わないでもないけどまあいいや。

 綾奈も今日、チョコを作ってるのかな? 一体どんなチョコを作ってるのかな? それを考えてしまうと明後日のバレンタインが待ちきれない。

 それに、エプロンをした新妻感が出まくった綾奈をまた見たい。けどさすがに今日行くのはダメだろうな。次回のお泊まりまで我慢だ。

「お兄ちゃん、なにニヤついてるの?」

「え?」

 横から美奈の声が聞こえてきたので美奈を見ると、美奈は呆れたような視線を俺に向けていた。

「どうせお義姉ちゃんがどんなチョコを作ってるのか考えてたんでしょ……」

「いや、そうだけどさ」

「お義姉ちゃんの家におしかけるなんてマネしないでよね。恥ずかしいから」

「さすがにしないって」

「本当かなぁ……?」

 信用ないなぁ……。

 というか、今日の美奈はどうしたんだ? なんかいつもより俺への当たりが強い気がする。

 俺が昨日、修斗の名前を出したからなのか、それとも綾奈の買ったものを間違って持って帰ってきてしまったからなのか……。いや、昨日の帰りに杏子姉ぇが、誰にあげるチョコを作るのかをしつこく聞いたからかもしれない。そうなると完全に八つ当たりだ。

 でも、本当に誰に渡すんだろうな? 一哉と健太郎、それに翔太さんや店長あたりしか心当たりがない。綾奈は『すぐにわかるよ』と言っていたけど、誰なんだろうな?

「お兄ちゃん着いたよ」

 俺が頭を悩ませていると、いつの間にか茉子の家に到着していた。

 美奈は俺に声をかけると、すぐにインターホンを押した。

『はーい』

 程なくしてインターホンから聞こえてきたのは、落ち着いた女性の声だった。どうやら茉子のお母さんのようだ。

茉里まつりさん。美奈です」

『あら美奈ちゃん、いらっしゃい。すぐ開けるから待っててね。茉子ー! 美奈ちゃんが来たわよー!』

 茉子のお母さん……吉岡茉里さんの茉子を呼ぶ大きな声が聞こえたあと、インターホンは切れたようだ。

 それから二十秒程で玄関が開き、中から茉子が出てきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る