第455話 ほっぺをぷにる綾奈
その日の放課後。
今日は綾奈の部活が休みなので、綾奈を迎えに行くために高崎高校の最寄り駅にやってきた。この時間は相変わらず高崎の生徒が多いな。
綾奈は……近くにはいないみたいだな。
どうしよう……高崎高校まで歩いて途中で綾奈と合流するか?
いや、でも入れ違いになってもいけないから、今回はここで待ってようかな。
構内で突っ立ってたら、通行人の邪魔になってしまうし、併設されているコンビニに入るか。
俺は綾奈に、コンビニにいることと、急がないでいいことをメッセージで送って、コンビニに入店した。
入店して雑誌が並ぶコーナーに行き、アニメ雑誌をパラパラと読んでいると、誰かに右肩をぽんぽんと叩かれた。
「はい……」
俺が顔を右に向けると、俺の肩を叩いたであろう人の指が俺の頬にぷにっとささった。
いやまぁ、この駅にいて俺にこんなことをする人なんてめちゃくちゃ限られてくるわけで、目線を下に向けると……。
「えへへ~♡ おまたせ真人」
はい。やっぱり俺の最愛のお嫁さんの綾奈でした。
「ぜんぜん待ってないから大丈夫だよ」
デートの待ち合わせのテンプレのようなやり取りをする俺たち。こんなことでも幸せを感じる。
「「……」」
俺たちはお互い笑顔で見つめあっている……のはいいんだけど。
「あの……綾奈さん?」
「なぁに? 真人」
めっちゃにこにこしてるなぁ。
「いつまで俺の頬をそうしてるんですか?」
そう。こんなやり取りをしている今も、綾奈の指は俺の頬にある。もちろん嬉しいよ。嬉しいんだけどさぁ……。
「旦那様のほっぺがぷにぷにしてて気持ちいいんだもん」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そろそろ行かない? あとでいくらでも触れていいからさ」
コンビニという決して広くない空間でイチャイチャしてるから、周りの目が少しチクチクしてる。
さすがにその人たちの方を見る勇気はないけど、横目で見ると俺たちをチラチラ見てる高崎高校の制服を着た男子がいるんだよ。
「ほんと!? じゃあ約束ね」
「わかった」
綾奈は俺の頬から指を離した。あとで俺も綾奈の頬を触らせてもらおう。
俺は立ち読みしていた雑誌を閉じ、本棚に戻そうとした。
「なんの雑誌を読んでたの?」
すると、綾奈が俺の読んでいた雑誌に興味を示してきたので、俺は持っていた雑誌の表紙を綾奈に見せた。
「これだよ。なんか新しいラノベが出てるみたいで、ちょっと興味を引かれてるんだよね」
先月は杏子姉ぇのことやらダイエットや綾奈の誕生日があって、かなりバタバタしていたからラノベのチェックも出来ていなかったからな。この雑誌で面白そうなものがあったから気になっていたのだ。
「そうなんだ。じゃあ今日は本屋さんに行こっか?」
「え? いいの? 綾奈はどこか行きたい場所はないの?」
「もちろん。私も最近はあまりライトノベルを読んでないから、どんなのがあるか見てみたいし」
すげぇ、百点満点な返しだよ綾奈。
オタク趣味に理解があるだけでなく、自らも進んで足を踏み入れてくれる彼女の鑑!
こんな女の子にオチないオタク男子はいないだろう。俺は既にオチてるし他の誰にもあげないがな!
「ありがとう綾奈。じゃあ改めて、本屋に行こっか」
「うん。行こっ、真人!」
俺は今度こそ雑誌を本棚に戻し、綾奈と手を繋いで移動を開始した。
向かうはアーケード内にある書店だ。
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