第447話 もも裏のマッサージ
私はまたうつ伏せの状態になって、真人がマッサージをしてくれるのを待ってるんだけど、真人の姿が見えないから、いつ、どのタイミングで触れてくるのかわからないからすごくドキドキする。
真人の姿が見えていたらこのドキドキも少しはマシだったかもだけど、それだと後ろの部分はマッサージ出来ないからね。
私は目を瞑り、真人が触れるのを今か今かと待っていると、真人が私のもも裏にそっと触れた。
「ひゃっ!!」
真人に触れられた瞬間、真人の手……というか指先の冷たさから、思わず大きな声を出してしまった。
ふくらはぎの時も冷たさは感じていたけど、我慢出来ないほどではなかった。
やっぱりももはふくらはぎよりも神経が通っているので敏感だ。
「ご、ごめん綾奈!」
真人は私が大声を出した瞬間に、私からパッと手を離して、真人を見ると両手を上げた状態で固まっていた。
「う、ううん! 私こそごめんなさい。急に大きな声を出しちゃって……」
「やっぱり……嫌だった?」
「そ、そうじゃないよ! ただ、ちょっと冷たくて……」
「そ、そっか……ごめん」
真人はまた謝ると、息を吐いたり、両手の指を擦り合わせて、なんとか指を温めようとしていた。
「そんなに温めなくても大丈夫だよ」
だから私は、そんなに無理して温めることはないって伝えた。真冬だもん、仕方ないよ。
「でもそれだと綾奈はびっくりするだろ?」
「た、確かに冷たくてびっくりしちゃったけど、二回目は驚かないから。それに……」
「それに?」
「手が冷たい人は、心が温かいってよく言うでしょ? 真人は本当にその通りの人で……だから、私は真人の冷たい手も大好きだよ」
「っ!」
この時期に真人と手を繋ぐと、真人の指先はいつも冷たい。
通学中も、私とちぃちゃんと合流するまでに、ポケットに手を入れて自分の手を温めようとしてくれているのは知っているけど、繋いだ真人の指先はやっぱり冷たい。
『手が冷たい人は心が温かい』というフレーズを小さい頃から聞いたことがあって、真人を好きになってからは、その言葉は真人のためにあるんじゃないかってずっと思っていた。
真人は私たちの中で誰よりも優しい心を持っている。そうじゃなかったら見ず知らずの私のおばあちゃんに声をかけることはしないだろうし、みんなにあれだけ慕われるはずないもの。
そして、そんな私の本心を聞いた真人の頬はさっきよりも赤くなっていた。かわいい。
「あ、ありがとう綾奈。その……嬉しいよ」
「真人かわいい」
私の言葉に照れた真人は、いつもの照れ隠しのポーズをとった。とってもかわいい。
「ん、んんっ! じゃあ……再開するね?」
「うん。お願いします」
そんな真人のかわいい姿を堪能した私は、またうつ伏せになった。
それから少しして、真人の手が私のもも裏に触れて、その冷たさにピクって身体が跳ねたけど、冷たさも経験したから声は出なかった。だけど……。
「ん……っ」
「あっ……んんっ!」
「ひうっ!」
真人の指が、手が動く度に、痛いけど気持ちよくて、くすぐったくて、だけどそれだけじゃないゾクゾク感が身体全体を電気のように駆け巡って、どうやっても声が出ちゃう。
「あの、綾奈さん。もう少し声を抑えていただけると……」
「わ、私も、んっ、そうしたいけど……あっ、止められなくて……あん!」
真人がマッサージをしながら注意してくるけど、抑えようにも抑えられないもん。
それからもマッサージは続き、私は自分の手で口を塞いでなんとか声が漏れないようにした。
真人はあれからも何度か私に注意してたけど、いつしか真人の口数は減っていって、最終的には黙々とマッサージを続けていた。
声が出ちゃって、ちょっと真人を困らせちゃったかな?
「……綾奈。終わったよ」
やがて真人の手が離れ、真人がマッサージの終わりを告げると、私は真人にお礼と謝罪をするため、うつ伏せから少し身体を捻って真人を見た。
「真人、どうもありが…………え?」
私は真人を見てびっくりしてしまった。
真人は頬を真っ赤に染め、口はキュッと真一文字にして、それだけ見るとやっぱりちょっと怒ってるのかなって思ったけど、彼の私を見る目がいつもより熱く感じられて、怒っているわけではないとわかったけど、私はあの目を見たことがある。
あれは真人の誕生日……サプライズのパーティーから真人の家に戻ってきた時に、私を見ていた真人の目だ。
だけど、あの時よりも視線に熱が込められていて、見られるだけで焦がされそうな、そんな眼差しで……まさか。
「綾奈……」
「ひ、ひゃい!」
「キス、したい……」
「っ!」
優しく、真剣な声音で聞こえた旦那様の声に、私の身体と心臓は大きく跳ねた。
こ、これは……ちぃちゃんの言っていた通りえっちな展開に……!?
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