第444話 脚のマッサージ その前に

 このキスのあとは、綾奈とまだまだイチャイチャして過ごそうかなと思っていた俺の脳内に、さっきふくらはぎをセルフマッサージしていた綾奈の姿が再生された。

 それで閃いた。

 俺はそれを伝えるために、綾奈とキスをしている唇を離した。

「綾奈。よかったら、マッサージ……していいかな?」

「ふえ!? ま、マッサージ!?」

 あれ? なんかめちゃくちゃびっくりしてるな。

「う、うん。俺が腰を痛めていたとき、綾奈はマッサージしてくれただろ? だから俺も、早く筋肉痛が治るようにと思って……嫌だったかな?」

 いい案と思ったのは最初だけで、あとから「あれ? これマズイんじゃ」って思いはじめて、ちょっと汗が出てきた。

 俺のときは腰だったけど、綾奈の患部は脚だ。

 それに、女性が男性に触れるのと、男性が女性に触れるのでは、意味が大きく違ってくる。一歩間違えたらセクハラ案件だ。

 俺たちは婚約しているからそんなことはないと思っているが……。

 ましてや綾奈の美脚にほとんど触れたことがないから、綾奈が過剰な反応を見せたのはそのため……だよな。

 綾奈に膝枕してもらったことも何回かあるし、女性を象徴とする部分にも触れたことがあるから、大丈夫だとは思いたいが、綾奈の返答があるまではドキドキもしてるしハラハラもしてる。

「……えっと、じゃあ……お願いします」

 顔を赤くした綾奈は、そう言って立ち上がり、ベッドの上にうつ伏せの状態になった。

 よかった。俺の考えは杞憂に終わったみたいだ。

 俺も立ち上がり、うつ伏せ状態の綾奈を見下ろす。

「っ!」

 すると、制服の短いスカートから綾奈の美脚が顕になっていて、俺はドキドキして生唾を飲み込んだ。

 綾奈は三学期が始まってから、ずっと黒のニーハイを履いていて、後ろから見る絶対領域がなんとも言えないエロさがあった。

「あ、綾奈……」

「どうしたの真人?」

「その……マッサージをする前に、ズボンを穿いていただけると……」

「……へ?」

 俺が伝えたいことがちゃんと伝わったらしく、綾奈は耳まで一瞬で赤くなっていた。

 マッサージをすると、痛さとくすぐったさで多分綾奈はモゾモゾと動く。そうなると、綾奈のスカートの中が見えてしまうかもしれない。

 もちろん見ないように心がけるつもりだが、俺も男だ。ましてや大好きで仕方がないお嫁さんのソレに、自然と視線が吸い寄せられるのは抗える気がしない。

「ご、ごめんね! すぐに何か穿くから、待っててね」

「う、うん。俺、ちょっと廊下出てるね」

 綾奈は顔が赤いままバッと起き上がり、クローゼットを漁り出した。

 俺は綾奈の着替えを見ないように、一旦綾奈の部屋から退出し、その間にこのドキドキを落ち着かせるよう努めた。

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