第434話 復活の真人
待ちに待った放課後になり、俺は一哉たちへの挨拶もそこそこに、急いで教室を出た。
早く綾奈に会いたい。
今日は会えないと思っていたのに、昼休みにやっぱり会えるようになったとメッセージをもらった時は教室にみんないるのに「よっしゃ!」って叫んでしまった。
それを見た一哉と香織さんは呆れていて、健太郎は笑っていた。
単純なヤツだというのもわかっているが、嬉しいものは嬉しいのだから仕方がないだろう。
「あれ? マサ、そんなに慌ててどしたの?」
「どうせ綾奈ちゃん絡みなんだろうけど、走ったら危ないよ」
廊下で杏子姉ぇと茜とすれ違ったが、悪いけどゆっくり話している時間も惜しいほど綾奈に会いたい。
「ごめん二人とも。これから綾奈に会いに行くから、またね!」
俺は立ち止まらずに二人に挨拶をした。
後ろから「相変わらずマサとアヤちゃんはラブラブだなぁ」と杏子姉ぇが言っていた。
電車に乗り、一駅離れた高崎高校の最寄り駅で下車し、構内で綾奈を待つ。
帰宅部らしき高崎高校の生徒たちが多く見受けられ、行き交う人の半分くらいは俺をチラッと見て通り過ぎていく。
違う制服を着ているヤツがここで人を待っていたらそりゃあ気になるよな。でも、前回ここに来た時よりも俺に向けられる視線が多くと感じるのは気のせいかな?
「まさと~!」
「あ!」
駅の出入口方面から俺を呼ぶ可愛らしい、聞き慣れた声が聞こえてきた。
声がした方を見ると、他の生徒に混じって綾奈がこっちに向かって手を振りながらやって来ていた。
「綾奈!」
今日初めて愛しのお嫁さんを目にしてテンションが上がった俺は、大きく手を振っていた。
「はぁ、はぁ……ごめんね真人。お待たせしちゃって」
「俺も今着いたところだから待ってないよ」
実際に五分も待っていない。
そんなに急いでこなくてもよかったのにと思いながらも、綾奈も早く俺に会いたかったのかなと考えて嬉しくなる。
周りを見ると、俺たちに注目する視線が一気に増えた。高崎高校でも人気者の綾奈が男と会っているのだから当然か。
行き交う人の中から、「あの人が噂の……?」っていう女子の声が聞こえてきた。声がした方を見ると、さっきの発言をしたっぽい女子がサッと目を逸らした。
え? 俺って高崎高校でも認知されてるの?
いや、俺というより、「西蓮寺綾奈の旦那」というワードが噂になってるっぽいな。
「ところで綾奈。今日はどこに行こうか?」
そんなことよりも、今からの綾奈とのデートを楽しまないと。
ゲーセンに行って久しぶりにエアホッケーするのもアリだし、本屋に行ったりカラオケしたり、ゆっくり散歩するのもいいな。綾奈とだったら何をしても楽しいからな。
「えっと、今日は、私の部屋でお話したいんだ。相談したいこともあるから」
なるほど。今日は綾奈の部屋でお家デートか。
しかし、相談とはなんだろう?
「あまり人のいる場所では言えないこと?」
「うん。出来れば二人きりになれるところでお話したい」
どうやらけっこう真面目な話をするみたいだな。
「わかった。じゃあ行こうか綾奈」
「うん。真人」
俺たちはお互いの名前を呼び合い、手を繋いで綾奈の家へと向かった。
俺は移動中も綾奈の相談がどんな内容なのかをいろいろと予想していた。
「ただいまー」
「お、お邪魔します」
綾奈の家に到着し、玄関に入ると、リビングから明奈さんが出てきた。夕食を作っている途中なのか、明奈さんはエプロンをしていた。
「おかえり綾奈。真人君も」
「ただいまお母さん」
「明奈さん、お邪魔し───」
「真人君?」
俺が言いきる前に明奈さんが俺を呼んだ。
明奈さんの顔を見ると、にっこりと笑っていた。
だけど、俺はその笑顔が俺にあることを訴えかけるように見えた。
まるで、「そうじゃないでしょ?」と言いたげな笑顔を見て、俺は言葉を間違えたと気づいた。
「た、ただいま……明奈さん」
「はい。おかえりなさい真人君」
明奈さんから訴えかける気配が消えた。やっぱりこれで合っていたんだ。
あまり長居しないのに「ただいま」を言うのは変かなと思っていたんだけどな。あと単純に慣れていないのと……。
これからはちゃんと「ただいま」って言おう。
「あとでなにか飲み物を持っていくわね」
「ありがとうお母さん。じゃあ真人、部屋に行こ」
「うん。ありがとうございます。明奈さん」
俺たちは明奈さんにお礼を言い、手洗いとうがいをして、二人で綾奈の部屋に入った。
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