第432話 幸せ太り
「太った!?」
屋上に乃愛ちゃんの声が轟く。
昼休み、屋上でお弁当を食べている途中で、私は三人に打ち明けた。
「乃愛ちゃん! 声、大きいよ」
「あ、ごめん。でも今日は私たち以外誰もいないから聞かれてないって」
乃愛ちゃんの言う通り、今日は私たち以外に屋上を利用している人はいないから、誰かに聞かれる心配はないんだけど、教室で打ち明けなくて本当によかった。
「それで今日は一人で先に行ったんだね? 真人に嘘をついてまで」
「うぅ……」
それを言われると辛い。自分が悪いのは承知しているから、ちぃちゃんの言葉がチクチクと刺さってくる。
「でも、見た目変わってない」
「うんうん。体重計が壊れてたんじゃないの?」
それだったらどれだけよかったことか……。
「実は体重計、最近新しいのにしたっぽいんだ。だから間違いはないと思う」
元日に一度自宅に戻ったときに、お母さんが体重計が壊れたって言ってて、それで三が日明けに新しいのを買ったって言っていたから、うちにある体重計はまだ新しい。
「まぁ、あたしはもしかしたらそうなんじゃないかって思ってたけどね」
「え?」
ちぃちゃんは前々から私が太ったんじゃないかって思ってたの!?
「ここ最近の綾奈を見てたらもしかして……ってね。綾奈、あんた真人の誕生日に自分でケーキ焼いてたけど、その前に練習で焼いたケーキはどうしてたん?」
「それは、お義兄さんや拓斗さんに協力してもらって食べてたよ」
練習で焼いたケーキをそのまま食べずに破棄するのは教えてくれたお義兄さんにあまりにも失礼だから、私も一緒に自分で焼いたケーキを食べていた。
「で、真人の誕生日当日もケーキを食べていたし、あんたらのご両親がその翌日に別のバースデーケーキを用意してくれてたって聞いたからそれも食べたんだよね?」
「う、うん……」
「それから杏子センパイの歓迎会でも少食の綾奈がケーキを五つも食べていたし、それであたしは「大丈夫かな?」ってちょっと心配はしてたんだよ」
「あぅ……」
た、確かにこの数週間を振り返ってみたら、ケーキをいっぱい食べていた。
普段ご飯の量は多くない私だけど、最近はぱくぱく食べてしまっていた。
「あはは。綾奈ちゃん幸せ太りだ~」
「そ、そうだけど、笑いごとじゃないよぉ……」
な、なんとかして痩せないといけないよね。でも私は運動が本当に苦手だから、家で出来る簡単な柔軟とかをネットで調べようかな?
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