第427話 パーカーを不思議に思う2人
俺が教室に着くと、一哉と健太郎は既に来ていて二人で喋っていた。香織さんは他の友達と楽しそうに話をしている。
そして俺が入ってきたのを確認すると、二人は俺の席へとやって来た。
「おはよう真人」
「よ、おはよ」
「おはよう二人とも」
とまあ、普通に朝の挨拶を交わした俺たち。だけど次の瞬間には健太郎は首を傾げていた。
「真人が制服の下にパーカーを着てくるなんて珍しい……というかはじめてだね」
「あ、ああ。ちょっと寒かったからな」
晴れてるけど風がちょっと強いからな。一応の理由にはなっている。
だけど、付き合いの長い親友の一哉はそれで納得はしてくれない。
「だがお前は中学の頃は寒くてもそんなん着込んでなかったろ?」
「やっぱりそうなんだ。真人って真面目だから、ほとんど制服を気崩したりしないから珍しいよね」
千佳さんと似たようなことを言ってくる健太郎。さすがカップルだな。
「去年まではほら、太ってて汗っかきだったからな」
厚い脂肪があったおかげで、去年までは人よりも寒さには強かったんだけど、それが無くなってからはなんかいつもの冬よりも寒さが
小学校まで真冬でも半袖で登校していた普通体型のヤツが、中学に上がって陸上部に入り、部活で体脂肪が減ったのかはわからないけど、冬はめっちゃ着込んで登校していたし。
とにかくキスマークを知られるわけにはいかない。早くて三日で消えるとなると、明日までは隠し通さないと……。
いや、でもまだまだ寒い日は続くし、キスマークが消えた直後からパーカーを気なくなるのは逆に不自然になって、消えたあとにバレるパターンもあるかもしれないから、消えたあともちょくちょくパーカーを着てきたほうがいいのかもしれない。そうなると予想最高気温が低くなることを祈るしかない。最低でも明後日までは低くあってくれ……!
「……」
だが一哉は微妙に納得してない様子で、パーカーをじっと見ていた。
……なんだか首元をじ~っと見られている気がする。
「な、なんだよ?」
「いや、なんでもないさ」
ならなんで今ニヤッと笑った?
このタイミングで予鈴が鳴り、二人はそれぞれ自分の席に戻っていった。
予鈴に助けられてなんとかバレずにすんだけど、一哉のやつはなんとなく勘づいている気がする。
お互いのことを知りつくしている間柄っていうのは、何かを隠しているのも瞬時に理解してしまうからなぁ。こりゃあ休み時間……特に昼休みは気を抜いたらダメそうだな。
……あれ? でもこのキスマークって、絶対に隠し通さないといけないのかな?
みんなは俺と綾奈の普段の様子を知ってるから、バレたところで「やれやれ」とか、「またイチャついてたんだな」って言われるだけで、そこまでイジってきたりはしないんじゃないか?
いや、でも俺はよくても綾奈がそう思ってるとは限らないからな。
キスマークを付けてから、けっこう申しわけなさそうにしている場面もあったから。
うん、やっぱり綾奈の名誉のためになんとか隠し通さないとな。
そんな決意をした俺だったけど、このあとの昼休みに俺のいとこの強引さと親友の余計なヒントでバレることになることを、この時の俺はまだ知らない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます