第423話 修斗のプレゼント②
「マジで? 俺の分もあるのか!?」
「もちろんですよ」
……って、そんなイケメンな笑顔で言われてもなぁ。
「いやだって、あのショッピングモールでは綾奈にプレゼントをあげたいとしか言ってなかったじゃないか!」
「言ったらサプライズにならないですからね。あの場でおにーさんの誕生日を聞けて良かったです。というか、尊敬している真人おにーさんの誕生日プレゼントを用意してないわけないじゃないですか」
……綾奈だけにサプライズをするものだと思ったけど、まさか俺にまでサプライズで用意していたとは思わなかった。
「なんか悪いな。お金ないのに……」
「いやいや、謝らないでくださいよ。俺が渡したくて買ったんですから。……お、あったあった」
そう言って修斗がエナメルバッグから取り出したのは、さっきの綾奈の誕生日プレゼントが入っていた小さい紙袋、その水玉模様が青になっている物だった。
「それ、もしかして……」
「それは開けてみてのお楽しみですよ真人おにーさん。どうぞ」
「うん」
俺は修斗から紙袋を受け取り、一応許可を得てから紙袋を丁寧に開けた。
「こ、これは……」
「何が入っていたの?」
綾奈が俺に身体をくっつけてきて紙袋の中身を見ようとしている。
突然のことで少しドキッとしたが、なんとか顔に出さずに紙袋の中に親指と人差し指を入れ、中の物を取り出した。
すると、そこに入っていたのは、可愛らしい犬のキーホルダーだった。
「可愛い」
「かわいい」
俺と綾奈の声が綺麗にハモった。そして同時にお互いを見て、何度か瞬きをして、おかしくなって笑いあった。
「おにーさんと綾奈先輩、シンクロ感がマジでヤバいですよ」
修斗の声で我に返った俺は、改めて修斗を見る。
「マジで可愛いキーホルダーだよ。というか、よく俺が犬が好きって知ってたな。まさかこれも……?」
「はい。おにーさんの妹に聞きました」
「やっぱりか」
美奈のやつ、家ではそんな話一切しなかったのに。
言ったらサプライズの意味がなくなるから、そこは修斗に肩入れをしたのかもしれないな。
「そのキーホルダー、見たらわかるかもですが、綾奈先輩の猫のキーホルダーと同じシリーズのやつなんです」
「あ、やっぱりそうなんだ」
イラストもなんとなく似てるから、もしかしたらそうじゃないかと思ったけど、予想が当たった。
「これもある意味ではおそろいかな」
「うん。おそろいがまた増えちゃった。すごく嬉しい」
「俺もだよ」
俺と綾奈は修斗からもらったそれぞれのキーホルダーを見せて、また笑いあった。
「ありがとう修斗。俺もこのキーホルダー、大切に使うからな」
「喜んでもらえて安心しました。改めてになりますが、おふたりとも、誕生日おめでとうございます」
「「ありがとう修斗(横水君)」」
俺もこれはマジで気に入ったから、今日家に帰ったら、綾奈と同じように学校用のリュックに付けよう。
「……それにしても横水君。真人のこと好きすぎじゃないかな?」
これで三人ともいい気分のまま解散の流れかと思いきや、何故か綾奈が修斗に突っかかっていった。
……綾奈さん、それはあなたにも言えるのではないでしょうか?
「そりゃあ、真人おにーさんはマジで尊敬してる人ですからね。当然ですよ」
修斗もなんで胸を張って言ってんだよ!?
元日までは綾奈が好きだったのになぁ……今はマジで綾奈より俺の名前を呼ぶ回数の方が多いし。
「むぅ……真人の一番は私だからね!」
綾奈はそう言いながら俺の腕に抱きついてきた。
もちろん俺の一番は綾奈だけど、女子だけでなく男子にまでヤキモチを妬くんかい。もちろん嬉しい。
「いや、さすがに綾奈先輩に張り合おうとは思ってませんから」
「へ? あれ……?」
だが、修斗は普通に受け流した。これには綾奈も暖簾に腕押し状態で拍子抜けみたいな表情をしている。可愛い。
だけど、俺も修斗がもしそこで張り合おうとしたら困ってしまうのだが……。
「真人おにーさんの一番はもちろん綾奈先輩ですけど、真人おにーさんの一番の弟分は俺ですから。そこだけは絶対に譲りません」
「いや譲らないも何も、俺の弟分になりたいやつなんて修斗くらいだからな!?」
そんな物好きは何人もいないって。
「わからないですよ? 吉岡も「真人お兄ちゃん」って言っておにーさんを慕ってるんですから」
「あー確かに。というか俺はただのオタクだからな!?」
こう、年下に慕われるのはもちろん悪い気はしないんだけど、修斗も茉子も顔面偏差値はめちゃくちゃ高い。そんな二人がただのオタクである俺の弟分と妹分をしてると思うと不思議に感じる。
「前までの俺ならそれだけでバカにしてたと思いますが、今は違います。真人おにーさんは真人おにーさんです。良かったら今度、真人おにーさんのオススメのアニメを教えてください!」
「お、おう。わかった」
弟分の圧に若干気圧されながらも、三人で楽しく会話を楽しみ、校門で修斗と別れ、俺と綾奈はゆっくりと綾奈の家に帰るのだった。
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