第420話 誰の手作り?
実は綾奈のバースデーガトーショコラを作っている途中で、修斗たちに差し入れを持っていこうと思った俺は、翔太さんに言って、このガトーショコラクッキーも作らせてもらった。
それもあって、一昨日西蓮寺家に着いたのが夜の九時くらいになってしまったのだ。
俺が手に持っているガトーショコラが入った紙袋を見せたら、修斗を含めたサッカー部員全員が固まった。
まさか差し入れがあるなんて思ってなかっただろうし、ましてやそれが俺の手作りのガトーショコラだなんてびっくりするだろう。
「なん……ですって!? え? マジで手作りなんですか?」
「うん。そうだよ」
「い、いいんですか?」
「当たり前じゃん。ダメなら持ってきてないって。ほら」
俺は修斗に紙袋を手渡した。
俺から紙袋を受け取った修斗は、じっとその紙袋を見ているのだが、かっこいい顔がゆっくりと喜色に染まっていった。
うんうん。作ってきた甲斐があったし、サプライズも上手くいってよかった。
「あ、ありがとうございます! おいみんな聞いたか!? 綾奈先輩の手作りのガトーショコラだ! 心して食うぞ!」
「「おう!」」
「「はい!」」
「「え?」」
修斗の声に部員のみんながいい返事をしているけど、俺と綾奈は戸惑いの声を上げた。
あれ? なんでみんなは綾奈の手作りと思っているんだ?
俺はさっきのやり取りを思い出していると、確かに「手作り」とは言ったけど、「誰の手作り」なのかを言っていなかった。
なるほどな。ケーキだとみんなは綾奈が作ったものだと自然に解釈したのか。俺もみんなの立場なら勘違いしてしまうだろうな。
それ以前に、俺が料理出来るなんてみんなは思わないだろうしな。修斗のこのリアクションからして、美奈や茉子も言ってないみたいだし。
「「うおぉぉぉぉぉ!」」
俺が考え事をしていると、前からどよめきが起こった。
何事かと思い、考えをやめて前を見ると、サッカー部のみんなはガトーショコラを食い入るように見ていた。
「めっちゃ美味そう……」
「いや確定で美味いだろ!」
「あの先輩はこんな美味そうなのをいつも食えるのか」
「綾奈先輩マジで完璧じゃん」
「あの先輩になりたい」
などなど、やはり綾奈が作ったものだと思い込んでいるようだ。
まぁ、俺が頼めば綾奈は嬉しそうに作ってくれそうだけど、だがこのポジションは絶対に誰にもやらん!
「ま、真人、早くみんなに本当のことを言わないと」
「た、確かに」
静観している場合じゃなかった。
「綾奈先輩。本当にありがとうございます。それじゃあ、いただきま───」
「ちょっと待った!」
修斗がガトーショコラを口に入れようとした瞬間、俺はみんなに待ったをかけた。
修斗は手をピタリと止め、大きく口を開けたまま俺を見た。そんな顔もイケメンとか反則だろこの弟分!
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