第410話 勢いあまって……
「ん……んん……!」
「あ、綾奈……! 一回、離して……」
「やぁだ……」
ドゥー・ボヌールから帰宅した俺と綾奈は現在、綾奈の部屋で口付けを交わしていた。
それも、とびきり熱いやつを……。
ここまでの道中は手を繋ぎ、楽しく会話しながら二人で歩いて、この家に入った時も、二人で明るい声で「ただいま」を言ったのに、手洗いうがいを済ませて階段を上るあたりから綾奈は急に静かになり、後ろをついてくる綾奈がちょっと気がかりだった。
そして、綾奈の部屋の前まで来て、「真人が先に入って」と綾奈が言ったので、俺は部屋の扉を開け、先に入った。
それからすぐ、綾奈も自分の部屋に入ったのだが、扉を閉めた瞬間、綾奈は後ろから俺を抱きしめてきた。
俺はびっくりしながら身体を百八十度回転させると、綾奈はまるでそれを待っていたかのように俺の唇を奪ってきた。
そうしてキスは続き、今はあぐらをかいている俺の膝の上に綾奈が対面で乗っている。
俺の両頬に手を当て、優しく、だけど逃がさないようがっちりと固定し、綾奈の足は俺の後ろでホールドされている。
綾奈とキスをしながら過去一積極的な綾奈に驚いていたのだが、俺は別のことにも驚いていた。
綾奈の大胆な行動に比べたらマジで些細なことなんだけど、綾奈がこう……俺の膝の上に、両脚を俺の背中に回して座るのって初めて見たから驚いた。
いや、この体勢なら必然的にそうなるんだけど、今まで見てきた綾奈の床の座り方って、正座や所謂女の子座りがほとんど……というか全てだった。
もしかしたら、座り方なんか気にしていられないくらいに、俺とキスをするのを我慢していたのか? いつから? 俺の作ったガトーショコラを食べた時からかな?
そこら辺は綾奈に聞いてみないとわからない……。
それよりもだ。 めちゃくちゃ激しいんだが……。
嫌とかではもちろんないし、むしろ嬉しい。
だけど、一回休憩させてほしくて唇を離すようお願いしたんだけど拒否された。脳がとろけるほどの甘い声で。
「ましゃとが……わるいんだからね。ん……あんな……サプライズをしたから……」
「んん……あや、な……」
あんなサプライズ……やっぱりガトーショコラのことだよな?
「だから、せきにんとって……ちゅ……わたしの、まんぞくするまで……ん……ちゅうして」
「うん……」
俺も、自分の誕生日に綾奈がサプライズでケーキと指輪を用意してくれたことで、家に帰ったあと、気がついたら夢中で綾奈の唇を求めてたしな。その時の俺よりもやや強い、キスがしたいという感情が綾奈の中にあるんだろう。
それに綾奈は多分、甘えモードマックスにもなっているな。
こうなっては俺がなにを言っても綾奈はキスをし続けるだろう。俺としても嬉しいので、綾奈の満足いくまでキスをしようと決めた。
それから三分くらい経過したけど、俺たちは相変わらず激しいキスをしていた。
最初は冷静に綾奈の状態を予想していた俺だけど、キスをしているうちに徐々に脳が痺れてきて、気づけば俺も綾奈とのキスに夢中になっていた。
綾奈の背中に手を回し、少し強く抱きしめている。
「ん……ましゃとぉ……しゅき、だいしゅき♡」
「おれもだよ……あやな」
それからさらに二分くらい経過した頃、このまま夕飯の時間までキスを続けるのだと思っていたんだけど、綾奈がゆっくりと唇を離した。
「「はぁ……はぁ……」」
長時間、夢中で激しいキスをしていたから、十分近くぶりに顔を離した俺たちは呼吸が荒くなっていた。
それからすぐに、綾奈はまた俺に顔を近づけ、キスを再開するのかと思いきや、綾奈は俺の唇ではなく、頬にキスをしてきた。一回だけでなく、ついばむように何回も何回も。
俺は最初こそ少しだけびっくりしたけど、再び綾奈の背中に手を回し、綾奈の自由にさせていた。
すると、綾奈のキスの雨は頬から顎周り、そして首へとゆっくり下がっていった。嬉しいけど少しくすぐった───
「ん!?」
やがて首元まで下がってきたとき、少し強い刺激が走り、俺は驚きの声を出してしまった。
少し強い刺激……それはまるで、綾奈の唇が俺の首筋に吸い付くような、そんな感覚。
あれ? これってまさか……。
「あ、綾奈!?」
「あ……ご、ごめんなさいましゃと。つい夢中になっちゃって……つけちゃった」
俺の声で甘えモードマックスが解除されたのか、我に返った綾奈。頬を赤らめて少し困った顔で謝ってくる。……可愛い。いや、そうじゃなくて!
俺は綾奈が離れたタイミングで立ち上がり、スマホのカメラを使って自分の首筋を確認する。
すると、俺の思った通り……綾奈に吸われたと思った場所は赤くなっており、見事なキスマークがついていた。
というか誰だ!? 綾奈にキスマークの付け方を教えたのは! ……いや、考えるまでもなく茜か千佳さんか杏子姉ぇの誰かだろうな……。
「あら? 真人君、首のそれって……」
「……お察しの通りです」
「あぅ……ご、ごめんなさい」
その後、夕食時に綾奈のご両親にも見られて、明奈さんはなんだか微笑ましい笑みを、弘樹さんは苦笑いをしていた。
幸いなのは、制服のシャツでギリギリ隠せる場所につけられたってことかな。
消えるまで隠さないと、絶対に一哉と茜と杏子姉ぇはイジってくるだろうからなぁ……。
……万が一に備えて、消えるまではパーカー付きのトレーナーを着こもう。
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