第405話 麻里奈に今日のことを聞いてほしい綾奈
真人がお義兄さんと一緒に厨房へと向かう背を私はじっと見ていた。どんなケーキを用意してくれたのかを考えると、すごくテンションが上がって顔がにこにこしているし、胸の内もドキドキとわくわくでいっぱいだった。
ここに来た時からもしやとは思っていたけど、まさか本当に私のバースデーケーキを用意してくれていたなんて……部活が終わったら校門に真人がいるし、プレゼントでかわいいシュシュも貰っちゃったし、念願だった猫カフェ・ライチにまで連れて行ってもらえて……幸せいっぱいだったのに、まさかおかわりがあるなんて……。
「綾奈」
「あ、お姉ちゃん」
今日の真人と一緒にいた出来事を思い出していたら、横からお姉ちゃんに声をかけられた。お姉ちゃんは私服を着ていて、ここの制服は身につけていなかった。
「今日は私服なんだね」
「そうね。この時間から貸し切りにするから今日はお手伝いしなくても大丈夫って翔太さんに言われてたから」
「そうなんだね」
確かに、今日のスタッフさんの数はいつもの土曜日と変わらないし、貸し切りにするのはきっとSNSで告知していたから、お姉ちゃんが手伝わなくても大丈夫だったんだ。
「それで綾奈。真人にどこへ連れて行ってもらったの?」
「それがね……聞いてよお姉ちゃん! あの猫カフェ・ライチに行ってきたんだよ!」
お姉ちゃんの言葉がスイッチになり、私のテンションが一気に上がった。誰かに聞いてもらいたくて仕方がなかった。
「ライチって、最近出来た、あの予約倍率が高すぎて全然行けないって噂の、あのライチ?」
確かに予約が取りにくいのは知っていたけど、そんな風に言われているんだ。ここの常連さんに聞いたのかな?
「そうなの! 猫ちゃんみんなかわいくて幸せだった。それからね、ライチのスタッフさんに城下さんがいたんだよ」
「城下さんって、もしかしてよくここに来てくれるあの城下さん?」
「うん! もうびっくりしちゃった」
それからも私はお姉ちゃんにライチでの出来事を話して、お姉ちゃんは笑顔で聞いてくれていた。
「よかったわね綾奈」
「うん!」
「ところで、真人からのプレゼントはなんだったの?」
私の話をずっと笑顔で聞いてくれていたお姉ちゃんが、今度はプレゼントを聞いてきた。
「これだよお姉ちゃん」
これも聞いてほしかった私は、右手を上げて、手首にしているシュシュをお姉ちゃんに見せた。
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