第401話 城下さんのサプライズ
「二人とも楽しんでる?」
「あ、城下さん」
また猫が来るのを待っていると、猫ではなく城下さんが俺たちの元にやってきた。手には1枚のお皿を持っている。
……あれ? 何かを追加で注文したりしていないのに、なんで城下さんはお皿を持っているのだろう?
「はい。どの猫ちゃんも本当にかわいくてすごく楽しいです」
「それは良かったわ。真人君とポテト食べさせあったりでイチャついてるし、ダブルで楽しんでる感じね」
「はい! もう最高です」
今のくっついているのを見てイチャついてると言ったのかと思いきや、ポテトを食べさせあってたのを見られてたのか。
「あはは。真人君照れない照れない。っと、はい綾奈ちゃん。これどうぞ」
照れてる俺を見て笑った城下さんは、持っていたお皿をテーブルに置いた。
「これは……」
お皿に乗っていたものを見ると、猫の顔の形をした直径十センチくらいはありそうな、なかなか大きいクッキーが置かれていた。チョコレートソースで顔も書かれている。
「え? 私頼んでないですよ? 真人が頼んだの?」
「いや、俺も知らない」
俺と綾奈は顔を見合せてこのクッキーをオーダーしたのかを確認しあったのだが、どうやら綾奈も知らないみたいだ。
「ふっふっふ~、これは、私からのサービスよ綾奈ちゃん」
「ふぇ!?」
「えぇ!?」
このクッキーは城下さんが自ら綾奈のために注文した品だった。
それを聞いて目が点になる俺と綾奈。
「え? なんで……」
「綾奈ちゃんは今日が誕生日って真人君が言ってたから、私も何か贈りたくなっちゃったから、この店の人気メニューをプレゼントってわけ」
なるほど……急にプレゼントは用意できないから、それならここの人気メニューであるこのクッキーを……ってことか。
確かにこれはSNS映えもしそうで若い世代だけはそれだけで注文しそうだし、なにより美味しそうだから、人気メニューなのも納得だ。
「い、いいんですか?」
綾奈はまだ困惑しているのか、クッキーと城下さんを交互に見て、本当に貰っていいのかを聞いている。俺も綾奈の立場なら絶対そうなっていただろうから気持ちはめっちゃわかる。
「もちろんよ。まぁ、何も言わずに持ってきたのは悪かったけど、良かったら食べて」
「は、はい! ありがとうございます城下さん」
綾奈は笑顔になって城下さんからのプレゼントを受け入れた。そんな笑顔のお嫁さんを見て、俺も自然に笑顔になる。
「そ、そうだ。写真撮らないと!」
そう言うと、綾奈は少し慌てた様子でスマホを取り出し、震える手でクッキーを写真におさめた。
「かわいい……」
綾奈の撮った写真を見せて貰ったけど、ブレてなく上手く撮られていた。これは顔がニヤけてしまうのは納得だ。
「そうだ。どうせなら真人君に食べさせてもらったら?」
「えっ!?」
「俺もそれ、ちょうど思ってたところです。綾奈、どうかな?」
「う、うん。お願いします」
綾奈は照れながらもそれを了承した。
杏子姉ぇの歓迎会の時、俺に自分のチョコレートケーキを笑顔で食べさせたのに、食べさせられる側になると照れるんだな。可愛い。
「あ、そうだ。城下さん、お願いが……」
俺はそう言うと、スマホのカメラを動画モードにして、それを城下さんに手渡した。
「オッケー。バッチリ撮影するから任せといて」
「お願いします」
けっこうノリノリな城下さんに撮影をお願いし、俺はクッキーを手に持って耳の部分を綾奈の口に近づけた。
「はい、綾奈。あ~ん」
「う、うぅ~」
俺は笑顔で綾奈が食べてくれるのを待ったんだけど、綾奈は口を開かずに食べるのをとても躊躇している。これってもしかして……。
「か、かわいすぎて食べれないよぉ……」
やっぱりか。でもその気持ちはめちゃくちゃわかる。
その後も綾奈は一分くらい悩んでからようやく一口食べてくれた。
城下さんが渡してくれた俺のスマホで動画を確認すると、食べているところはもちろん、さっきの躊躇っていた場面もバッチリ動画に残っていた。
これはあとで、麻里姉ぇの部屋で一人で見返そう。
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