第397話 いよいよ猫カフェへ
ゲーセンでプリクラを撮り、電車に揺られて三駅先の駅で降り、少し歩いたところで、いよいよ本日のメインイベントの一つ、猫カフェへとやって来た。
ネットで見たけど、実際に見ると予想より大きい建物だな。
時刻は午後二時五分前……いい時間だ。
「いよいよきららちゃんたちに会えるんだね! うぅ~、ドキドキしてきちゃったよぉ」
俺の隣にいる綾奈は落ち着かない様子だ。……いや、落ち着かないのは電車に乗った時からだけどね。
電車に揺られてる時も、「きららちゃん来てくれるかな?」とか、「ラックくんは一番撫でさせてくれないみたいだけど、どうにか撫でたいよぉ」とか、めっちゃソワソワしてテンションが上がっていた。
きららちゃんたちに会う前からこのはしゃぎよう……実際会ったらどうなるんだろうな? 杏子姉ぇと初めて会ったの時よりテンションが上がったりして。
「それにしても、外観からして猫がいっぱいだな」
「ね~。かわいいなぁ」
猫がいっぱいと言ったけど、もちろん本物の猫がいるわけではない。
白い外壁には、黒い猫のシルエットが何匹も描かれていて、それだけで猫好きには心躍る場所と言える。現に綾奈がそうだし、俺もちょっとワクワクしてきた。
「あっ! ねぇ見て真人! あそこ!」
「ん? あ、あの子は……」
綾奈が何かを見つけたようで、テンションをさらに上げながら俺のコートの袖を引っ張りながらこの猫カフェの窓を指さしているから、俺もそこを見ると、なんとこの店の一番人気の子、アメリカンショートヘアのきららちゃんが自分のベッドで日向ぼっこをしていた。
「かわいい~! きららちゃんだよ!」
綾奈がとてとてと小走りで窓に近づきキララちゃんを眺めだした。
「ほら綾奈。そんなところで見てないで、早く中に入ってきららちゃんと触れ合おうよ」
実際きららちゃんや他の猫たちと触れ合えるかはその子たちの気分次第なのだが、ここで眺めていても触れ合える機会は永遠に訪れないし、何よりもう約束の二時になるから早く入ろうと促した。
まぁ、きららちゃんはお客さん全員に挨拶がてら近づいてくるみたいだから、チャンスはあるだろう。
「そうだね。早く入ろうよ真人」
「うん」
すごいなぁ……今まで見たことがないくらいはしゃいでいる。童心に返ったみたいだ。……といっても俺たちはまだ子どもだけど、それでもそんな言葉が頭に浮かぶほど、綾奈の目は本当に輝いていた。
俺は綾奈に手を引かれる形で猫カフェの扉の前まで来た。
ブラウンの扉には、猫の形をした赤のプレートに白で『猫カフェ ライチ』と書かれていた。可愛らしい文字だな。
俺は店のドアノブを回し扉を開けると、扉の上の方に取り付けられていたベルが鳴った。スタッフがお客さんの来店に気づくためにつけてあるんだな。
俺と綾奈がこの猫カフェ、ライチに入ると、正面にいた二匹の猫が俺たちを見てきた。綾奈はめちゃくちゃ喜んでいる。猫もそうだけど、俺のお嫁さんの喜び方がめちゃくちゃ可愛いな。
中は落ち着いた感じになっていて、各猫専用のベッドに猫じゃらしなど様々な遊び道具、そしてキャットタワーなんかもいっぱいあって、広いしマジで猫ファーストで考えられた設計になっている。
「いらっしゃいませー」
俺たちが猫に気を取られている間に、ここのスタッフさんが俺たちに近づいてきたんだけど……。
「待ってたよ。綾奈ちゃん、真人君」
「あなたは……城下さん!?」
なんとその店員さんは、冬休み最終日にドゥー・ボヌールで知り合った麻里姉ぇのファンの一人、城下美咲さんだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます