第392話 校門前で待っていた真人
「はい。今日はここまでね」
「「ありがとうございました!」」
午前十一時半。約二時間半に及ぶ部活は終了し、私たち部員は顧問であるお姉ちゃんに礼をした。
気のせいか、今日のお姉ちゃんの指導はいつもより厳しかった気がする。部活前のやり取りで少し機嫌が悪くなったからかな? でも私も色々指摘されたから違うのかも。
「それじゃあみんな、気をつけて帰りなさいね。それと綾奈」
先生モードが解除されたのか、はたまた部活が終わったからなのか、お姉ちゃんはいつもの呼び方に戻っていた。
「なぁに? お姉ちゃん」
「あなたは早く校門に向かいなさい」
「校門?」
なぜ校門? 家じゃなくて?
私は意味がわからずに小首を傾げた。
「どうして?」
「綾奈の愛しの旦那様を、この寒空の中待たせたいのかしら?」
「え? ……ふぇ!?」
お姉ちゃんの言葉の意味を遅れて理解した私はとてもびっくりして大声を出してしまった。帰り支度をしていた人がすごくびっくりしている。ごめんなさい。
「ま、真人が来てるの!? ここに!?」
「来てるわよ」
お姉ちゃんがイタズラで言ってるわけでもなさそうなので、どうやら本当に真人はこの高崎高校まで私を迎えに来てくれているみたい。でも、どうしてここまで来てくれたのかな?
帰り支度をしていたみんなは、いつの間にかその手を止めて、私とお姉ちゃんの会話を聞き入っていて、中には「綾奈ちゃんが呼び捨てにしてる」という声も聞こえてきた。
私が呼び捨てにしてるのは真人だけだから、みんなびっくりするよね。
「考えるのはあとにして、早く真人のところへ行ってあげなさい」
そ、そうだよ! 今はあれこれ考えるよりも真人の元へ行かなくちゃ!
それに、どうしてここまで来たのかは真人本人に聞いたら教えてくれるだろうし。
「うん! ではみなさん、お先に失礼します。ちぃちゃん、また週明けにね」
「デート、楽しんできなよ」
「ありがとう!」
音楽室を出た私は、急いで階段を駆け下りる。体力がないからすぐに息を切らしてしまうけど今は気にしていられない。
「はぁ……はぁ……ま、まさと……」
四階から一階まで一気に駆け下りた私は、へろへろになりながらも下駄箱で靴に履き替えて外に出た。
そして体力が尽きかけながらもなんとか校門に到着した私は、肩で息をしながら学校の敷地から一歩出て左右をキョロキョロと見る。
「あ、部活お疲れさま。綾奈」
私から見て左側に、本当に真人がいた。
「ま、ましゃと……」
私はへろへろのまま、真人に近づき、私の走り方が危なっかしいからか、真人が駆け寄ってきて抱きしめてくれた。
「おっと! 大丈夫綾奈?」
「う、うん……はぁ……はぁ……」
「もしかして、走ってきてくれた?」
「……うん。お姉……ちゃん、から……真人が……来てる……って、聞いて」
「ゆっくり来てくれても良かったのに……。ありがとう綾奈」
真人が私を包み込むように抱きしめてくれて、頭も撫でてくれている。とても心地いい。
そうだ! 真人がどうしてここまで来てくれたのかを聞かないと。
私は呼吸が整うまで真人に抱きしめてもらってから少しだけ離れた。
「でも、どうしてここまで来てくれたの?」
「綾奈と約束したからね。部活が終わったら、なるべく綾奈と一緒にいるって」
「え……?」
確かに言ったけど……私は真人は家で待っててくれてるとばかり思っていて……。
「俺も愛するお嫁さんに早く会いたかったから、麻里姉ぇに終わる時間を聞いて来ちゃった」
まさか真人がここまで迎えに来てくれるなんて、お姉ちゃんに言われるまでは思ってもみなかったから……旦那様のサプライズに驚きと嬉しさを感じながら、それと同時にここまで来させてしまったことへの申し訳なさも同時に感じてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます