第385話 麻里奈の部屋へ
綾奈がトイレから出てきたタイミングで、俺は明奈さんに一礼してからリビングを出て、綾奈と一緒に廊下を歩いていた。
「真人。私がそれ持つよ」
綾奈はそう言って、俺が持っているキャリーケースに手を伸ばしてきた。
「いやいや、俺が持つよ。階段あるし、さすがに申し訳ない」
綾奈がホテルのベルガールみたいなことをしようとしてきたが、俺はそれを断った。
女の子に自分の荷物を持たせるような趣味はないし、それを持たせて階段を上がらせて万が一体勢を崩して怪我をしてしまったら目も当てられない。
「……むぅ。私のときは持ってくれたのに」
「大切なお嫁さんに重い荷物を持たせるわけにはいきません」
「大切なお嫁さん……えへへ♡」
綾奈は俺の言葉にふにゃっとした笑みを見せてくれた。何度見ても可愛すぎるその笑顔を見て、俺の手は自然と綾奈の頭に伸び、撫でていた。
廊下でちょっとしたスキンシップをしてから階段を上がり、俺は綾奈と一緒に麻里姉ぇの部屋へと入った。
「うわぁ……」
綾奈の部屋の壁が薄いピンク色なのに対し、麻里姉ぇの部屋の壁は薄い青色だ。スカイブルーというやつかな?
麻里姉ぇが使わなくなって何年も経過しているだろうから、生活感はあまりないけど、勉強机や収納棚、本棚なんかはそのままになっている。
それでもホコリは全然かぶってないのを見ると、明奈さんが頻繁に掃除をしているのか、はたまた麻里姉ぇ自身が帰ってきた時に掃除をしているのだろう。
「綺麗な、落ち着く部屋だね」
「うん。真人がいるあいだは自由に使っていいってお母さんが言ってたよ」
「ありがたいな……本当に。綺麗に使わないとな」
日曜日、帰る前にはちゃんと掃除をして、今より綺麗な状態にして帰ろう。この部屋を使わせてもらえる麻里姉ぇへのせめてものお礼として。
「さて、じゃあお風呂いただこうかな」
あまり遅くなっても迷惑になるかもだし、早めに入っておこう。
「真人。お風呂から出たらお話しようね」
「もちろん。出たら綾奈の部屋に行くよ」
「うん。待ってるね。お風呂から出たら髪を乾かしてあげる」
お、久しぶりに髪を乾かしてくれるんだ。嬉しいなぁ。
「ありがとう。楽しみだよ」
「私も」
俺たちはお互いにっこりと笑いあった。
「じゃあ明日は俺が綾奈の髪を乾かす番だね」
「えへへ、楽しみ」
綾奈は優しく俺を抱きしめてきたので、俺も優しく抱きしめ返す。
頬にキスをしあって綾奈を離し、俺はキャリーケースからハンカチを二枚取り出し、麻里姉ぇの勉強机に隣り合わせて置き、綾奈から貰った指輪とペンダントを外してハンカチの上にそっと置いた。
そしてキャリーケースからスウェットと下着を取り、綾奈と一緒に部屋を出た。
「じゃあ綾奈。またあとで」
「うん。ゆっくり温まってきてね」
お互い手を振りながら、俺は綾奈が自分の部屋に入るのを確認してから、風呂に入るため階段を降りた。
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