第384話 真人の寝る場所
「ところで真人君。お夕飯は食べてきたの?」
リビングに入ったら、前にいた明奈さんが後ろを振り返って聞いてきた。弘樹さんは先に部屋に戻っていき、綾奈はお花を摘みに行った。
「はい。食べてきました」
明日、綾奈に食べてもらうケーキを作ったあと、家に戻り夕飯を軽く食べてここに来た。ゆっくり食べていたらここに来る時間がさらに遅くなってしまうと思ったから本当に軽くだ。
多少物足りなさはあったけど、ダイエットを継続しているからあれくらいでいいだろう。
「そうなのね。じゃあお風呂は?」
「えっと、すみません、それはまだ……」
先に風呂に入って来たら良かったけど、遅くなってしまうのと、湯冷めしそうだったので風呂は入らずにここに来た。決して無遠慮に風呂に入らせてもらおうとは思っていない。
「あらそうなの? じゃあお風呂に入る?」
「……いいんですか?」
「もちろんよ。もうみんな入ってるから遠慮せず使ってくれて構わないわ」
「ありがとうございます明奈さん。では、荷物を置いたら使わせていただきます」
「ならお湯を温め直しておくわね」
「すみません明奈さん。それから……」
俺はここに泊まる上で、一番大事なことを教えてもらってなかったので、それについて聞いてみることにした。
「どうしたの?」
「俺って、どの部屋を使ったらいいですか?」
そう。それは俺が寝る部屋がどこかということだ。
綾奈の部屋? とも考えなかったわけではないけど、婚約しているとはいえ、さすがにそれは許してはくれないだろう。
明奈さんと弘樹さんの寝室ももちろん却下だろう。なにより落ち着いて眠れない。
となると、リビングか綾奈の部屋の向かいにある部屋になるんだろうけど……。
「真人君は麻里奈の部屋を使ってちょうだい」
「麻里姉ぇの部屋、ですか?」
「えぇ。綾奈の向かいの部屋よ」
やっぱりあそこは麻里姉ぇの部屋だったのか。
「でも、いいんですか?」
麻里姉ぇの部屋を勝手に使うのはやっぱり申し訳ない。事前に許可を取ってないから、あとで俺が部屋を使ったのを知った麻里姉ぇが不快な思いをするのではないのかな?
「大丈夫よ。麻里奈には既に伝えていて、二つ返事で許可を得てるから」
「本当ですか!?」
明奈さん、事前に麻里姉ぇに聞いていたのか。そりゃそうだよな。
しかし麻里姉ぇも、今はドゥー・ボヌールの二階で翔太さんと暮らしているけど、少なくとも自分が高校卒業まで暮らしていた部屋を、男に使わせるのを二つ返事で了承するのはどうなんだ? 部屋を漁ったりは絶対しないけど、もう少し警戒してもいいはずなんだけどな。
「本当よ。麻里奈も『真人にならいくらでも使ってもらって構わないわ』って言ってたから」
「……義理の姉さんの信頼がすごい」
俺だからそんなに無警戒なのか……。嬉しいけど、それでいいの麻里姉ぇ?
「真人君なら私も安心だし、麻里奈の私物はほとんどないから大丈夫よ」
「わかりました。そういうことなら遠慮なく使わせていただきますね」
あとで麻里姉ぇに報告とお礼のメッセージを送ろう。
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