第377話 修斗もプレゼントを渡したい

「ところで真人おにーさん」

「ん?」

 二人が納得してくれたことにより、いざこざが起きなくて一安心していると、修斗が俺を呼んだ。いつになく……は失礼だし、まだ修斗のことをそこまで知らないのだけど、真剣な表情をしていた。

 改めて思うけど、修斗ってイケメンだよなぁ……。

「その……俺も綾奈先輩にプレゼントを贈ったらダメでしょうか!?」

「いいよ」

 俺は即答した。

「い、いいんですか!?」

「うん。綾奈も喜ぶと思うし。修斗が綾奈に特別な感情を持っていたら困ってしまうけど、そうじゃないんだろ?」

 もしそうだったら、さっきの言葉を撤回したりはしないが、複雑な気持ちになってしまう。

「そうですね。さすがにおにーさんたちの間に割って入る勇気はありません。純粋に綾奈先輩の誕生日をお祝いしたいのと、その……おにーさんと綾奈先輩さえ良ければ、これからも一人の友人として仲良くしていきたいので……」

 ……なんだ。俺が心配する必要はどこにもなかったな。

「大丈夫。綾奈は絶対喜んでくれるし、修斗のことも友達って認識してると思うよ」

「はい! ありがとうございます。真人おにーさん」

「俺は何もしてないって。ところで、プレゼントはいつ渡すんだ? もし機会がないなら作るけど」

 誕生日当日は土曜日だから、修斗も部活さえ終われば時間はいくらでも作れるだろうけど、まだ気軽に呼び出せるほどの関係は築けていない。だからどこかのタイミングで修斗と合流するように動くことも可能だし、そうしたら修斗も渡しやすいだろうしな。

「それなんですが、さすがに誕生日当日はおふたりの邪魔をしたくないので……翌日の日曜日って予定ありますか?」

「日曜日? 予定は特に入ってないよ。綾奈も多分そうだと思う」

 日曜日も俺は西蓮寺家にお泊まりするので、綾奈が千佳さんたちと遊ぶ約束をしていなければ、日曜日も夜まで俺と一緒にいるはずだ。

「じつは、日曜日にうちの中学でサッカー部の練習試合があるんです。誰でも見学出来るみたいなので、おふたりにぜひ観に来てほしいんです!」

 サッカーの練習試合か……。これまでスポーツ観戦の類は全然してこなかったから面白そうだし、修斗が出るのなら応援にも力が入りそうだ。

 何より久しぶりに中学校に入れるのは嬉しい。

「わかった。あとで綾奈に聞いて、行くか行かないかを連絡するよ」

「わかりました」

「試合、頑張れ」

「ありがとうございます!」

 修斗の気合いも入ったみたいだし、こりゃあ今から試合見るのが楽しみだな。

「あ、どうせなら美奈や茉子にも声をかけるか」

 二人がついてくるかどうかはわからんが、冬休みにゲーム対決をした四人で、今度は外で試合を観戦するのも楽しそうだ。

「よ、吉岡も……」

「な、中筋も来る……」

 ん? 修斗の両横の二人が美奈と茉子の名前にあからさまに動揺した。もしかして二人って……。

「この二人も同じサッカー部なんですが、まぁ……この反応からわかる通り、吉岡とおにーさんの妹が気になってるんですよ」

「……やっぱりか」

 綾奈は憧れている存在で、本命は別にいたのか。

 美奈と茉子は可愛いからな。モテるのも頷ける。

「吉岡はおにーさんが声をかければ来ると思いますが、妹は気が乗らないでしょうね」

「俺もそう思うよ。まぁダメ元で声をかけてみるから」

「「お、お願いします!」」

「調子いいなぁ」

 さっきまで俺を挑発してきたのに、現金な二人だなぁ。

 俺は修斗と苦笑して、三人と別れて書店を目指して歩き出した。

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