第375話 誕生日プレゼント選び

 翌日の日曜日のお昼過ぎ。

 俺は一人でショッピングモールへやって来た。

 今回の目的は、もちろん綾奈の誕生日プレゼントだ。

 ゆっくりとプレゼント選びが出来るのは今日しかないからな。ここで決めないといけない。

 だけどじつは、綾奈に何をプレゼントするのかはほとんど決めている。あとは綾奈に似合いそうなソレを買うだけだ。

 クリスマスイブに渡した指輪みたいなガチで特別な意味を込めた物ではもちろんない。毎回そんな物をプレゼントするような経済力は高校生にはないし、さすがの綾奈も困ってしまうだろう。

 だから今日買うのは、多分女性なら持っている人が多い物だ。

 実は冬休みのお泊まりでピンときたんだけど……う~ん……やっぱり男一人で女性ものを買うのはちょっと気恥ずかしかったりする。クリスマスプレゼントを選ぶ時は一哉と健太郎がいたからそこまでではなかったんだけど、今回は一人だ。

 茜に付き添いを頼もうかと考えなかったわけではないんだけど、あいつは今日、綾奈と杏子姉ぇと会うらしいから諦めた。

 そんなこんなで雑貨屋に到着。ここに来るのは綾奈へ贈る指輪を買って以来だ。

 今年に入って近くまでは来たんだけど、その時拓斗さんが綾奈の肩に手を置いているのを見た時だ。

 ……あの時近くにいた俺もそうだけど、拓斗さんってやっぱりタイミングが悪いよな。

 俺は心の中で苦笑し、女性ものの雑貨が並ぶ売り場を歩き、お目当てのものを探す。

「お、あったあった」

 二分くらい探して、買おうと思っていた物を見つけた。

「しかし、いっぱい種類……というか色があるな」

 それが陳列されている一角には本当に様々な色の物があって、ちょっと目移りしてしまう。

 ここはやっぱりピンクかな? でも青もなかなか捨てがたい……。

 商品を見ながら、俺は綾奈を頭の中で思い浮かべる。可愛い……じゃなくて!

 綾奈の好きなものといえば、猫と甘いものと、あとはピンク系の色だよな。う~ん……。

 それとは逆の青系ってのも似合いそうだし見てみたいけど、やっぱり綾奈といえばピンクだよな。

 綾奈は俺からのプレゼントだとなんでも喜んでくれるだろうけど、誕生日はその人が主役になる特別な日だ。そんな特別な日に贈るプレゼントで冒険して心から喜べない品……この場合は色か。それを贈ってもいけないしな。

 うん。決めた! ここはやはりピンクのにしよう。

 俺はピンク色のそれを手に取り、レジにてお会計をし、プレゼント用にラッピングしてもらった。

 お店を出て、プレゼントが入った袋をボディーバッグにしまった。

 さて、これでこのショッピングモールに来た最大の目的は達成したわけだが、これからどうしようかな?

 ドゥー・ボヌールに行ってケーキ作りを教えてもらうのはまだ数時間先だし、かといって家に帰ってもラノベを読むかゲームするかの二択。

 ランニングは朝やったし、筋トレはドゥー・ボヌールから帰ったあとにするつもりだし、やっぱり帰らずにぶらぶらしようか。一人でここに来るのはすごく久しぶりだしな。

 そうと決まれば、まずは書店にでも行くか。

 手始めにモール内でもかなり頻繁に利用する書店に向けて歩き出そうとした時、後ろから声をかけられた。

「あれ? 真人おにーさん?」

「え?」

 俺をそんなふうに呼ぶ男子なんて、最近知り合ったあいつしかいないと思いながら、俺は後ろを振り向いた。

「やっぱり修斗か」

 そこにいたのは、最近できた俺の弟分で、美奈と茉子のクラスメイトでもある横水修斗と、その友人二人だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る