第359話 電話越しでイチャつく夫婦
そういえば、綾奈はどうして電話をかけてきたんだろう? 俺が綾奈を『俺の女』と言ったのが嬉しくなって、我慢できずに電話をかけてきたのかもしれないけど、なんとなくちゃんと理由があってかけてきたのではないかとも思っていた。
「ところで綾奈?」
『なぁに? 真人』
「綾奈が電話をかけてきてくれたのって、俺が『アレ』を言ったのが嬉しくてかけてきてくれたの?」
『それもあるんだけど、ちゃんと用事もあるんだよ』
やっぱりか。
まぁ、どちらにしても綾奈の声が聞けるのが嬉しいんだけどね。
「そっか。綾奈の声が聞けて嬉しいよ」
『わ、私も真人の声が聞けて嬉しいよ……。私は真人の女だから』
「っ!」
綾奈さん……しばらくは『俺の女』を多用する気ですね。どんだけ気に入ってしまったんだ!?
『いや綾奈。電話越しでイチャついてないで、昼休みももうあまりないんだから、用件を言いなって』
『い、イチャついてなんか……あぅ~……』
スマホから千佳さんの声が聞こえてきた。例によってちょっと呆れているようだ。
「まあまあ千佳。これがこの二人のいつものやり取りなんだから」
健太郎が千佳さんを宥めたんだけど、ちょっと腑に落ちない。
いくら俺たちでも、電話越しでなんかイチャつけるわけないじゃないか。
『そうなんだけどさ……あぁいいや。あたしが言うよ』
千佳さんもなんで納得してんの? 電話越しでイチャつくなんて高等テクニック、付き合って三ヶ月弱の俺たちに出来るわけないのに……。
ちょっと抗議しそうになったけど、確かに昼休みももうあまり残されてないし、いつまで経っても話が進まなくなりそうだったから、俺は抗議したい気持ちを抑えて千佳さんの次の言葉を待った。
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