第358話 『俺の女』
「もしもし綾奈?」
『えへ、えへへ~♪ まさと~♡』
なんだ? 綾奈の声がやたら上機嫌……というか、緩みまくっている感じだ。何かいいことでもあったのだろうか?
「どうしたの綾奈? えらく機嫌がいいみたいだけど……」
『うん。もう嬉しくって……えへへ~』
これは、俺もほとんど見たことがないくらい機嫌がいいぞ。理由はなんだろ? 小テストで満点取ったとか、運動が苦手な綾奈だから、このあとの授業が体育で、苦手な競技だったけど、それがなくなったとか?
なんにしても、俺絡みではないのは間違いないだろう。
「何があったの?」
『……『俺の女』』
「はぇ!?」
『真人に『俺の女』って言われたのがすごく嬉しいんだ~♡』
「ち、ちょっと待って! なんで綾奈がそれを知ってるんだ!?」
俺と綾奈は別々の高校に通っている。だからついさっき俺が言った『俺の女』というセリフは、綾奈は聞きようがないはずなのに……どうやってそれを知ったんだ? マジでわからん。
『山根君が動画送ってくれたの♪』
「は!? 一哉が!?」
こいつ、動画なんていつの間に撮ってたんだよ!? ……あ、そういやさっきスマホを構えてたよな? それか!!
「お前なんで綾奈に動画送ってんだよ!!」
「いや、さっきのバカとのやり取りは面白いものになりそうだったから撮ってたんだが、これ聞かせたら絶対西蓮寺さんは喜ぶだろうなと思ってな」
バカって……めちゃくちゃストレートな罵倒だな。……俺もバカと思ったけどさ。
ガタイよくて見た目通り脳筋な奴だったけど、俺がキレたらすぐに逃げ出したし、かなり見掛け倒しだったな。
『山根君ありがとう!』
「綾奈が『ありがとう』だってさ」
スピーカーモードにしていないので、俺が綾奈のお礼を一哉に伝えた。
しかし、今スピーカーモードで話してなくて本当に良かった。さっきの綾奈のゆるゆるでご機嫌でめちゃくちゃ可愛い声を他のクラスメイト男子に聞かせたくなかった。俺も大概独占欲が強いな。
「どういたしまして」
「一哉が『どういたしまして』って言ってるよ」
俺経由で綾奈と一哉が会話している。
綾奈のテンションも落ち着いてきているし、そろそろスピーカーモードに切り替えても大丈夫かもしれないな。
俺は綾奈にことわりを入れてからスピーカーモードにして、スマホを机の真ん中に置いた。
スピーカーモードにして、健太郎と香織さんも綾奈に挨拶をした。
どうやら向こうは綾奈と千佳さんの他に、もう何人か一緒に弁当を食べている友達がいるみたいだった。
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