第352話 修斗が来た理由

「それよりも横水君。どうして真人を『おにーさん』って呼んだの?」

 綾奈が俺の聞きたかったことを聞いてくれた。綾奈もやっぱり気になっていたんだな。

「元日のあの一件がきっかけで、真人先輩めっちゃかっこいいって……俺も真人先輩みたく愛する女性を守れるように強くなりたい、さんざん真人先輩をバカにして、こいつと吉岡を泣かせてしまった俺を許してくれた真人先輩の優しさと広い心に感動して、オレもこんな男になりたいって思ったんです!」

「え? マジ?」

「マジです! それに、初詣で約束した通り、綾奈先輩の話題で盛り上がっていた二人にもちゃんとおにーさんと付き合っていて、婚約もしていると今日伝えました!」

「私も聞いてたから間違いないよ」

 あの約束、マジで果たしてくれたんだな。

 ぶっちゃけると、初詣以降も色々ありすぎてその約束自体忘れていたんだけどな。

「お前、まるで俺が信用できないヤツみたいじゃないか!」

「実際そうじゃん! あんたが私のお兄ちゃんをディスってたのは忘れてないからね!」

「うぐ……お前、今それ言うのはズルいだろ」

「まぁまぁ……。とにかく俺は信じるから。ありがとう横水君」

 マジで信用してるけど、誰かが口を挟まないと二人の言い合いが永遠に終わらない気がしたから、俺が口を挟むことにした。

「嬉しいですおにーさん! それであの、できたら俺のことは修斗って呼んでください」

「え?」

「尊敬するおにーさんには、他人行儀に接してほしくないんです。今日こいつに無理言ってここまで来たのは、初詣の時の約束を果たした報告と、それをお願いするためだったんです。お願いしますおにーさん!」

 横水君が腰を直角に曲げて頭を下げた。

 というか、彼の名前、修斗っていうのか。サッカーをしているって聞くし、マジで名前の通りだな。

 しかし、知り合ってまだ一週間かそこらの後輩……しかも美奈の話では最近まで俺をディスっていたのに、初対面のあのやり取りでここまで態度がぐるっと正反対になるとは……。

 美奈を見ると頬を膨らませて不機嫌をアピールしている。横水君の熱意に不本意ながらも根負けしたのかもしれないな。

 横水君もここまでお願いされてるし、これで断ったらちょっと申し訳ないよな。

「わかったよ。これからよろしくな修斗」

「はい! よろしくお願いします真人おにーさん!」

 こうして俺に、イケメンの弟分が出来ました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る