第350話 これからどうする?
「ところで綾奈。千佳さんは一緒じゃないの?」
「うぅ……ちぃちゃんは……あ、来たよ」
「え?」
綾奈が見た方向を俺も見ると、確かにこっちに近づいてくる色素の薄いオレンジ色の髪のギャルがこっちに近づいてきていた。間違いなく千佳さんだ。
「綾奈お待たせー……って、なんでいきなりイチャイチャしてんのさ? しかも校門前で」
「またおっぱいおっきい子が来た! しかもモデルみたいなギャル!」
俺と綾奈を見て呆れている千佳さんを見て素直な感想をこぼし……いや、ぶちまけた杏子姉ぇ。
またカオスな空気になりそうな予感が……。
「え? ……って、氷見杏子じゃん! なんで風見の制服着てんの!?」
杏子姉ぇを見たら絶対にみんな驚くよな。
それだけ杏子姉ぇが有名人ってことなんだけどさ。
俺はお互いを紹介し、その途中でみんながようやくやって来た。
「へぇ、まさか真人が有名人といとこだったなんてね。よろしくです杏子センパイ」
「私もアヤちゃんの親友がギャルだとは思わなかったよ。こちらこそよろしくねちかっち」
「てか、なんでみんなは来るの遅かったんだ?」
「杏子さんのすぐ後ろをついていったら目立つだろ? だからしばらく時間を置いて教室を出たんだよ」
だから廊下でもみんなはついてこなかったのか。
杏子姉ぇが歩けばそれだけで目立つ。しかも下級生の手を引っ張りながら歩いてたらさらに目立つ。
結果、俺もすれ違ったり立ち止まって俺たちを見ていた生徒にバッチリ目立ってしまった。
「つまり俺は生贄にされたと……?」
「まーお前はこれから色々大変だろうが頑張れ」
「他人事だな……」
ま、覚悟は出来てるから、あとは気の持ちようだな。
「綾奈ちゃん。千佳ちゃんも久しぶりー!」
「うん。香織ちゃん」
「香織おひさー」
香織さんはというと、初詣ぶりに会った(一月六日に姿だけは見たけど)綾奈に嬉しくて抱きついていた。
「香織ちゃんも残ってたんだね」
「うん。綾奈ちゃんがうちの学校に来るって真人君から聞いて、会いたくてね」
「『真人君』?」
綾奈は抱きつかれながらも、香織さんが俺を名前で呼んだことに小首を傾げた。
ちょっとびっくりしてはいるけど、怒ってはいなさそうだ。
「あーうん。真人君に誕生日プレゼントを渡した時にね。……ダメだった?」
「ダメじゃないよ」
「西蓮寺さん。私も『真人君』って呼ぶようにしたわ~。事後報告になっちゃったけど、よかったかしら~?」
「雛さんもですか? 大丈夫ですよ。よかったら私も名前で呼んでください」
「わかったわ~綾奈ちゃん」
綾奈は二人の事後報告を聞いて、笑顔で了承した。
以前の綾奈なら『むぅ』って少し頬を膨らませたりしてヤキモチを妬いていたのに、それが全くない。
俺が綾奈から離れないのはもちろん、友達のことも信頼しているみたいだ。
「ところで綾奈。このあとはどうするの? どこか寄り道する?」
綾奈がここに来たってことは、放課後にデートをするためだと思っていたから、気になった俺は、綾奈にこの後の予定を聞いた。
「えっと、真人さえよければなんだけど、これから真人の家に行ったらダメ、かな?」
「もちろんいいよ。というか、わざわざそんな確認しなくても、綾奈だったら勝手に来ても大丈夫だって」
綾奈はもう家族の一員って、俺以外のみんなもそう思ってるんだから。
「えへへ……。ありがとう」
「ねぇマサ。私もこれからマサの家に行こうと思ったんだけどいい?」
「杏子姉ぇも?」
「うん。叔母さんにも挨拶しておきたいし、みっちゃんもこの時間なら帰ってきてるよね? 叔父さんには週末にでも会うとして、二人に会いたいんだ」
「なるほどね。俺は全然いいけど、綾奈もいい?」
もし綾奈が嫌と言えば、杏子姉ぇとは別々に帰ることとなるんだけど、果たして綾奈の返答は?
「もちろんいいよ。杏子ちゃんと一緒に下校する日が来るなんて夢みたい……」
聞くまでもなかったな。
綾奈は杏子姉ぇの大ファンだし、一緒に帰るなんて、それこそ一生ないと思ってもいいイベントが向こうから舞い込んできたんだ。断る理由が見つからないな。
「ありがとアヤちゃん」
そんな夢見心地な綾奈に、杏子姉ぇが抱きついた。
「ひゃう! わ、私のほうこそ、ありがとうございましゅぅ……」
「みんなはどうするんだ?」
俺たち三人の予定が決まったので、他のみんなはどうするのかを聞いた。
「俺は茜を送ってから帰るよ」
「千佳。よかったら家に来ない?」
「え? いいの?」
「もちろん。いいよね姉さん?」
「もちろんよ~。一緒に帰りましょ~」
千佳さんは健太郎の家に行くみたいだな。
俺たちと同じ日に付き合いだした二人だけど、健太郎、もしくは千佳さんの家に行くのって今回が初めてなのかな?
「ありがとカズくん。そんなわけだからキョーちゃん。みんなもまた明日ね」
茜の挨拶を皮切りに、それぞれ別れの挨拶を交わし、電車組と徒歩組で分かれて歩き出した。
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