第345話 歓喜の声がした2年生の教室

 始業式が終わり、担任からの簡単な連絡事項を聞いて、今日は終了となった。

 俺がカバンを持って席を立とうとしたら、一哉と健太郎、そして香織さんが俺の席に集まってきた。

「みんなお疲れ様~」

「始業式で校長の長い話を聞いただけだけどな。北内さんもおつかれ」

 今日は特に部活もないから、多分この後は茜がうちのクラスに来てみんなで帰る流れかな? 俺は綾奈が来るまで待つけど。

 あれ? 綾奈が来るってことは、千佳さんも来るのかな?

「ところでさ、今日上の階……二年生かな? 騒がしくなかった?」

「確かに。なんというか、歓声が凄かったよね」

 始業式が終わったあと、教室に戻ってからのホームルームから、二年生がテンション高くて、下の階の俺たち一年の教室にもその歓声は響いていた。雛先輩がいる三年生の教室にも聞こえていただろうな。

「一哉。茜から何か聞いてないか?」

「いや、俺も知らん」

 茜と付き合っている一哉なら、何か聞いてるかと思ったけど、何も知らないみたいだ。

 一体何があったんだろう? あの叫び声とか歓声は尋常じゃなかったぞ。

「普通に考えたら転校生、だよね?」

「確かにね。でもただの転校生であそこまでテンションって上がるのかな?」

「きっととんでもない美少女だったり」

「とんでもない美少女って……」

 綾奈や麻里姉ぇみたいなレベルの美少女がこの学校に来たってのか?

 あの姉妹や千佳さん、そして茜や香織さんや雛先輩レベルの美少女ってそうそういるのかな? いや、それよりも……。

「でも美少女ってだけだったら、女子があんなに黄色い歓声を上げないよね?」

「俺も香織さんと同じこと考えてた」

 逆にとんでもないイケメンが来たとしたら、男子の歓声はありえないだろうし。

「ちょっと待った」

 まだ見ぬ転校生について話していたのに、急に一哉が手を出して待ったをかけた。

「なんだよ一哉?」

「いや、お前いつから北内さんを名前で呼ぶようになった?」

「え? 俺の誕生日の前日からだけど……あぁ……」

 そういや、名前で呼び出したこと、みんなに言ってなかったな。

 俺は二人に、香織さんを名前呼びするようになった経緯を説明した。

「なるほどなぁ」

「そういえば、姉さんもその日の夜、真人を名前で呼んでたよ」

「あ、もちろん私も名前で呼ぶようになったよ。ね? 真人君」

「そ、そうだね……」

 なんで俺の名前をそんなに強調して呼ぶのかねぇ?

「まぁそれはいいとして、お前、西蓮寺さんにはこのこと言ったのか?」

「綾奈に? …………あ」

 俺は一月六日の夜から今日までを頭の中で振り返ってみたけど……言ってないな。

 同じ家にいたのに綾奈に会えてなかったし、サプライズ誕生日パーティーや遊園地でそれどころではなかった。

「綾奈はもう嫉妬なんかしないから大丈夫だって」

「だと思うが、でも言うなら早めに言っとけよ? 何も聞かされずに突然北内さんがお前を名前呼びしてる場面に出くわしたら驚くからな」

「これから綾奈はこっちに来るし、その時に言うか」

「綾奈ちゃん来るの? 私も会いたいから待ってていい?」

「もちろん」

 綾奈も喜ぶだろうから、ぜひ一緒に待っててもらいたい。

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