第344話 綾奈の指輪に注目する友人2人

 私とちぃちゃんが教室に入り、席に座ると、クラスメイトの女子二人が私の席にやって来た。

「綾奈ちゃんおはよー!」

「西蓮寺さん。おはよう」

 手を挙げて元気よく挨拶をしたのが江口えぐち乃愛のあちゃん。私よりちょっとだけ長いダークブラウンの髪をした活発な女の子。

 そしてちょっと物静かで、黒の細いフレームのメガネをしていて、背中まで伸びた黒髪をしたのがくすのきせとかちゃんだ。

 性格は対象的なんだけど、親友同士でふたりともかわいい。

「おはよう。乃愛ちゃん、せとかちゃん」

 去年の十一月のある日……真人と初めてキスをした翌日、真人と放課後デートをするため高崎高校に来てくれた真人を校門で一緒に待っていた二人だ。

 ちぃちゃんとも仲が良く、お弁当も四人で食べることが多い。

 そして私と真人のことに興味津々だから、この二人が来たということは、ホームルームが始まるまで色々聞くつもりなんだろうなぁ。

「ねぇねぇ綾奈ちゃん。中筋君とのクリスマスデート、どうだったの?」

 わかっていたけど、いきなりだなぁ。

 せとかちゃんも『聞きたい』って顔に書いてあるよ。

「とっても楽しかったよ」

 それからも二人はどこに行ったのかを細かく聞いてきたので、特に隠すこともないと思った私は、映画館やデパートの屋上の観覧車に乗ったことを話した。

 そしてここまで聞いた二人が次に興味を示すのは一つしかなくて……。

「それでそれで? 綾奈ちゃんはプレゼント、何を貰ったの!?」

「きっと特別なものを貰ったはず」

 真人から何をプレゼントされたのかに話題がシフトした。

 ちなみに話している途中でちぃちゃんも私の席にやって来た。

 せとかちゃん、なかなかに鋭いなぁ。

 ここまでくると、私も自分から話したくてそわそわしていた。

「えへへ~、実はね───」

「綾奈の左手を見てみなよ」

 私は顔が緩みながら、弾んだ声で教えようとしたら、ちぃちゃんが割って入ってきた。

「「左手?」」

 ちぃちゃんの言葉に、二人の視線は私の左手に行っちゃうわけで、二人は私の左手の薬指にしてある指輪を見つけた。

「もしかしてその指輪!?」

「婚約指輪!?」

「う、うん……」

 予想以上のリアクションにだなぁ……。

 乃愛ちゃんが大声を出すから、クラスメイトのみんながこっち見てるよぉ。

「えっ!? じゃあ綾奈ちゃんと中筋君って」

「結婚したの?」

「いや出来るわけないじゃん」

 興奮する二人をよそに、ちぃちゃんが冷静にツッコミを入れた。

「高校生のうちに結婚はいくら二人でも無理だよ」

「私も真人もまだ結婚出来る年齢じゃないから」

 ちぃちゃんの言葉がなんか含みがありそうだけど、考えないでおこう。

「そっか。今は女性も十八歳にならないと結婚できないんだっけ」

「うん。それに私はまだ十五歳だし……今月の二十一日に十六歳になるよ」

「あ、もうすぐなんだね。ちょうど土曜日だし、やっぱりデート?」

「デートもすると思うけど、前日から真人が泊まりに来てくれるんだ~」

「え? マジで?」

 これにはちぃちゃんも驚いていた。

 あ、そうだ。私の家にお泊まりに来てくれるの、他の人に言ってなかった。

「でももうすっかり親公認なんだね」

「うん。私の両親も真人を『息子』って呼ぶ時があるからね」

「中筋君優しそうだったし、幸せな夫婦生活が確約されてる」

「憧れるなぁ」

「乃愛。あんた彼氏いたっけ?」

「いないよ。私も中筋君みたいな優しい彼氏ほしーい!」

 乃愛ちゃんとせとかちゃんの中で、真人の人気が上がってる。真人の彼女として、そして妻としてはとても嬉しい。

 そこからはホームルームが始まるまで、理想の彼氏像や、ちぃちゃんの彼氏の清水君についての話題が続いた。

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