第343話 始業式が終わったら放課後デート
千佳さんの首を見ると、オレンジ色のマフラーを巻いていた。このマフラー、見覚えがあるぞ。
「千佳さん。そのマフラーって」
「そ。クリスマスイブに健太郎からもらったマフラーだよ」
「やっぱり」
「清水先輩からのプレゼントなんだ! 千佳さんすごく似合ってる」
「ありがと美奈ちゃん」
千佳さん。そのマフラーをすごく大切にしているのがわかる。
クリスマスイブのデートで、健太郎との仲がさらに良くなったみたいだな。
初詣で健太郎は千佳さんを呼び捨てにしてたしな。
大事な友達カップルがラブラブで俺も嬉しい。
「そういう真人も指輪してるね」
「もちろん」
俺は綾奈と千佳さんに左手の薬指にしている指輪を見せた。
「ありがとう真人」
「俺の一番の宝物だしね。綾奈は?」
「えへへ~、もちろんしてるよ」
そう言って、綾奈はふにゃっとした笑みのまま、俺に左手を見せてきた。
薬指には、俺がプレゼントしたピンクゴールドの指輪が光っていた。
「ありがとう綾奈」
「私だって、この指輪が一番の宝物だからね」
俺たちは笑いあって、繋いでいる手に少し力を込めた。
「お兄ちゃん達は相変わらずだね」
「まったく……少しは周りの目を気にしろっての」
千佳さんの言う通り、周囲の学生や社会人が、俺と綾奈の仲睦まじいやり取りを見ていたのだが、俺たち二人はそれに気づくことはなかった。
それから美奈と別れ、電車に乗り、あっという間に高崎高校の最寄り駅に到着した。
「綾奈」
俺は左手のひらを自分の胸の辺りに出して綾奈を呼んだ。
「なーに? ……あ」
綾奈もわかったらしく、左手を出して、それを俺の左手と重ねた。
「「…………」」
昨日、綾奈の家の前で決めた、俺たちだけの特別な儀式……みたいなもの。
「ねぇ、真人」
「ん?」
「今日ね、学校終わったら、そっちの学校に行っていい?」
え? 風見高校に来るってこと?
「いいけど……家から遠くなるだろ?」
「真人と一緒に帰りたくて……少しでも一緒にいたいから」
「っ!……わかった。気をつけてきてね」
「うん!」
ドアが閉まるまで時間がなかったから、そのまま綾奈がうちの高校に来るのを聞き入れたけど、本来なら俺が迎えに行くところだよなぁ。
綾奈から……ましてや家とは逆方向にある学校に来てもらうのはちょっとだけ気が引けたけど、まぁ俺も綾奈とは一秒でも長く一緒にいたいから、綾奈のお言葉に甘えるか。
「ほら、綾奈行くよ」
「うん。じゃあ真人、あとでね」
「わかった。着いたらメッセージして」
綾奈と千佳さんが電車から降りてすぐにドアが閉められ、電車は次の駅に向けて微速前身を開始した。
久しぶりの綾奈との放課後デート……楽しみだな。
そんなウキウキ気分を吹き飛ばすような出来事が、このあと俺を待ち受けていることなど、この時の俺は知る由もなかった……。
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